財団法人 放送番組国際交流センター / Japan Media Communication Center

お問い合わせ

HOME > 第18回 JAMCOオンライン国際シンポジウム > [報告(3)] インドネシアにおける公共放送

JAMCO オンライン国際シンポジウム

第18回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2009年1月16日~2月28日

アジア諸国の公共放送

[報告(3)] インドネシアにおける公共放送

Frederik Ndolu
Indonesiasatsu Communication 会長

1. 歴史的背景

インドネシアの公共放送サービスは2002年11月、議会が放送に関する 32/2002法を可決したときをもって始まる。これはスハルト大統領の新秩序体制以降に設立された最新のタイプの機構の1つであり、概念的も制度的にも新しいものであった。しかし、公共放送がインドネシアで正式にスタートしたのは2005年3月18日であり、公共放送に関する政府規則 11/2005号が発令されてからちょうど1年後のことであった。この法律の第14条は、Radio Republik Indonesia(ラジオ)とTelevisi Republik Indonesia(テレビ)を政府組織から公共機関へと改変することを定めていた。この法律によれば、民主政府のもと、 公共の放送サービスは4種類、すなわち公共放送機関、民間放送、コミュニティ放送、有料テレビ/ラジオ放送 から構成される。

Radio Republik Indonesiaは1945年9月11日に、Televisi Republik Indonesiaは1962年8月24日にそれぞれ創設され、インドネシアでの全国的な放送を通じて国民や政府のために長年情報を提供してきた。Radio Republik Indonesiaは「独立、中立、自治を旨とし、プロフェッショナルな公共サービスを提供する放送局」のビジョンのもとに、以下のミッションを追求している。(1) 社会的コントロールを実施する。(2) 国民のアイデンティティと文化を確立する。(3) インドネシア全土で国民の各階層に教育情報と娯楽を提供する。(4) 地域的および国際的なレベルで他の国との協力関係と相互理解を促進する。(5) 国民のインテリジェンスを高め、法律と人権をベースとした情報化社会の発展につくす。(6) 国民の一体性を強化する。他方、Televisi Republik Indonesiaは「国の文化に根ざすテレビ局として国の一体性を維持する」とのビジョンのもとに、以下のミッションを追求している。(1) 国の一体性をベースとして国民の関心事を伝える媒体となる。(2) 信頼性の高い情報と適切な娯楽番組を国民に提供する。(3) ビジネスパートナーとの相互協力を推進する。(4) スタッフや同僚全員にとって有益で健全、プロフェッショナルな職場を確立する。

創設以降の時の流れの中で、放送局はすべて政府機関となり、情報省の管轄のもとにおかれた。政府の方針に対する批評や批判は許されなかった。政府の放送局であることから、支配政党であるゴルカル(GOLKAR)や軍部を通じて独裁体制からの干渉と規制が絶えなかった。現体制に好意的な世論を創り出すために、他のラジオ局とテレビ局もすべてRadio Republik Indonesiaや Televisi Republik Indonesiaと同じニュース番組や特別番組を同じ時間帯に放送することを義務づけられた。このため、スタッフ、予算、機器などはすべて政府から供給され、保証された。

今日、状況は変化している。政府系の放送局が作製したニュース番組や特別番組を放送する義務はなくなった。最新の法律(第14条)によれば、Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaは政府の利益ではなく国民の利益につくすこととなっている。番組やコンテンツは独立、中立、非商業的でなければならず、政府、軍部、支配政党からの干渉や規制を受けてはならないとされている。

2. インドネシアにおける公共放送の現状

放送法によれば公共放送とは国または地方政府が組織した放送であり、独立、中立、非営利を旨とし、国民の利益に専念しなければならない。公共放送は国民によって運営される国民を強化するための放送である。公共放送は法律によって定められた制度であり、公的資金によってまかなわれ、編集と運営に関して大幅な独立性を持つ(Dennis McQuail, 2000: 156)。McQuail氏は公共放送の存在理由として以下のことを挙げている。(1) 幅広い好み、関心、ニーズに応え、多様な意見や信念を伝えること。(2) 特別な少数グループを考慮すること。(3) 国の文化、言語、アイデンティティを重視すること。(4) 各種の争点に関してバランスのとれた公平な見方を伝えることにより政治システムのニーズに応えること。(5) 品質を特に重視すること(放送番組と記者活動の両方において)。公共放送のメインの利害関係者である国民には、自分たちの見解を表し、自分たちの番組を制作する余地が与えられていなければならない。さらに、公共放送運営者が予算の支出や番組の放送に関して責任をとる体制になっており、これを確かめる手段が国民に与えられていなければならない。

Televisi Republik IndonesiaとRadio Republik Indonesiaの予算はすべて政府から出ているから、インドネシアの公共放送の発展は政府の放送局としての発展だった。政府組織から公共機関への改変は実際上名目的なものにすぎない。公共機関としてこれらの放送局は議会の管轄下におかれる。これまでのところ、議会は公共放送の予算だけを管理している。データによると、Radio Republik Indonesiaの2008年度の予算は約5000億ルピーアであり、Televisi Republik Indonesiaの予算は3500億ルピーアであった。Radio Republik Indonesiaは7000人のスタッフを雇い、全国で60の放送局を抱える。Televisi Republik Indonesiaは6000人のスタッフと27の放送局を擁する。スタッフの95%以上は公務員であり、残りはパートタイマーとなっている。パートタイマーの給与も政府予算から出ている。

政府規則11/2005によって、Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaには各放送エリアで利用可能なチャンネルに応じて周波数帯の少なくとも20%が割り当てられる(第15条第3節)。10チャンネル以下のエリアについては、それぞれ少なくとも2チャンネルが割り当てられる(第4節)。民間放送局が使用しているチャンネル数が多すぎる場合には、民間放送局が削減されることになる。

政府規則第2条によれば、Radio Republik Indonesia、Televisi Republik Indonesia、地方の公共放送局からなる公共放送は、インドネシア社会のすべての階層に向けた情報、教育、娯楽の健全な媒体としての役割を担っている。公共放送が伝えるメッセージは、インドネシアの文化的伝統を反映するとともに、インドネシアの社会的経済的な多様性反映していなければならない。さらにインドネシアのアイデンティティと文化を反映した社会的統合を強化する役割も求められる。Radio Republik Indonesia、Televisi Republik Indonesia、地方の公共放送局の目的は、信心深く、神(Bertaqwa)を敬い、知力のあるインドネシア国民の精神を支援し、国民としての一体感を強化することにある。

公共放送の重要性がインドネシアで高まっているのは、生活のあらゆる側面で自由の必要性が感じられているからである。放送関係のいくつかの非政府団体(NGO)はRadio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaの改革を訴えている。こうした訴えはニュースの独占による支配を特徴とする新秩序体制のもとで厳しく規制されていた民間放送や報道関係者によって支持されている。新しい変化の風は機構の変化をもたらしているが、まだ十分ではない。実際、公共放送局として再スタートしてから3年、Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaはまだその立場を明確に確立しておらず、放送のビジョンやミッションもはっきりしていない。

3. インドネシアの公共放送を取り巻くメディア環境

Radio Republik Indonesiaは200以上のラジオ局に取り囲まれている。これらのいくつかは、複数の地方放送局をつなぐ民間のラジオ放送網である。これは過去のRadio Republik IndonesiaやTelevisi Republik Indonesiaと同じ方式といえる。Radio Republik Indonesiaは59の支局に加え外国人向けのラジオ局を持っている。外国人向けのラジオ局は10カ国語で放送している。

Televisi Republik Indonesia (TVRI) は13の全国テレビ局と50以上の地方テレビ局に取り囲まれている。Televisi Republik Indonesiaは27の地方支局と単一の中央局からなり、インドネシア全土で376の放送経路を持つ。27の地方テレビ局の名称は次のとおり。1. TVRI Stasiun DKI Jakarta 2. TVRI Stasiun Nangroe Aceh Darussalam 3. TVRI Stasiun Sumatera Utara 4. TVRI Stasiun Sumatera Selatan 5. TVRI Stasiun Jawa Barat dan Banten 6. TVRI Stasiun Jawa Tengah 7. TVRI Stasiun Jogyakarta 8. TVRI Stasiun Jawa Timur 9. TVRI Stasiun Bali 10. TVRI Stasiun Sulawesi Selatan 11. TVRI Stasiun Kalimantan Timur 12. TVRI Stasiun Sumatera Barat 13. TVRI Stasiun Jambi 14. TVRI Stasiun Riau 15. TVRI Stasiun Kalimantan Barat 16. TVRI Stasiun Kalimantan Selatan 17. TVRI Stasiun Kalimantan Tengah 18. TVRI Stasiun Papua 19. TVRI Stasiun Bengkulu 20. TVRI Stasiun Lampung 21. TVRI Stasiun Maluku dan Maluku Utara 22. TVRI Stasiun Nusa Tenggara Timur 23. TVRI Stasiun Nusa Tenggara Barat 24. TVRI Stasiun Gorontalo 25. TVRI Stasiun Sulawesi Utara 26. TVRI Stasiun Sulawesi Tengah 27. TVRI Stasiun Sulawesi Tenggara。

いくつかの地方局はそれぞれの土地の言語の番組を放送している。今日までのところ、Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaは地上放送局にとどまっている。どちらも全国の視聴者向けの番組を放送する一方で、ローカルな番組も制作している。

Radio Republik Indonesiaは教育番組に加えて、社会番組も制作している。社会番組とは、村やコミュニティ、女性向けの番組、コミュニティを活性化するための番組などである。このほか、幼稚園から中学校までを対象とする「学校放送」という名前の教育番組もある。Radio Republik Indonesiaのもう1つの重要なポリシーは、すべてのラジオ局でインドネシアの文化的伝統を伝える番組を放送する ことである。このポリシーは、(1) インドネシアのさまざまな文化的伝統を守り、(2) 全国の放送網を通じてインドネシアの各階層の相互理解を促進し、国民の一体性を強化することを目的とする。Radio Republik Indonesiaは、放送に関する32/2002法と公共放送に関する政府規則11/2005をベースとして、社会のニーズや関心に応えた良質の番組を制作することを目指している。しかし、実際には、こうしたポリシーのもとにRadio Republik Indonesiaが公共放送局として十分に機能しているとは言い難い。公務員に対する政府の規制はいまも数多くあるうえ、資金も不足している。ラジオ局のあり方、地位、国民の参加につても制約が多い。

4. インドネシアにおける公共放送の組織、経営、サービス

32/2002法に従い、Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaは、大統領と議会の管轄のもとに、独自のカルチャーを培い、最高意思決定機関を創設できるようになった。この意思決定機関は5名の監督組織メンバーと5名の取締役会メンバーからなる。Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaのどちらにも“Dewan Pengawas”(理事会)がある。Dewan Pengawasのメンバーは政府のイニシアティブのもとに政府や社会からの推薦に基づいて議会によって選任される(Radio Republik Indonesiaに関する政府規則12/2005の第8条第3節)。Dewan Pengawasは公開テストに基づいて取締役会のメンバーを選任する(第7c条)。しかし、国から支給される予算を管理するという名目のもと、取締役メンバーの大半は公務員出身でなければならないという規則がある。これによって放送局の独立性と中立性が損なわれるのではないかと危惧する向きもある。

上述のケースの1例は2006年9月1日付けのインドネシア方法委員会(Komisi Penyiaran Indonesia)のニュースリリースに記述されており、同委員会のWebサイト(http:www.kpi.go.id/ )からダウンロードできる。Komisi Penyiaran Indonesiaは政府に提出した書簡の中で、2006年8月に実施されたTelevisi Republik Indonesiaの取締役会の選任が透明性と公正性を欠いていたのではないとの危惧を表明している。この危惧はNGOなどによっても広く共有されている。

もう1つの例は、同じWebサイトにアップされている2008年10月15日付けのニュースリリースに見られる。このニュースリリースはRadio Republik Indonesia Gorontalo(スラウェシ中部のゴロンタロ地方にある支局)に関するものであり、放送された番組の中立性と独立性を疑うものである。この局はある政党の2009年の選挙向けキャンペーンに沿った内容の番組を放送した。視聴者からの抗議を受けて、この局はこれを補正する政治的な内容の番組を放送せざるをえなかった。

32/2002法によれば、Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaは視聴料金、寄付、年次予算、広告収入を財源とすることになっている(第15条)。視聴者の数がまだごく限られているため、視聴料金はいまのところ徴収されていない。番組の質が高くないこともあり、視聴料を払おうとする人は少ない。視聴者は民間放送局をはじめとする他の放送局のほうを好んでいる。この結果、Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaはもっぱら国家予算に依拠して運営されている。広告収入もごく限られている(2008年には2%以下)。

たとえば、Televisi Republik Indonesiaは3500億ルピーアの国家予算を受け取って6000人のスタッフの給与と番組制作費をカバーしている。予算の残りは寄付金と広告収入からくる。TVE(視聴料金を徴収するには至っていない)を管轄する教育省とは共同で教育番組を制作している。Televisi Republik IndonesiaとRadio Republik Indonesiaが公共放送としてスタートして以来、収支は赤字が続いている。ジャカルタには全国チャンネル(ローカルのTelevisi Republik Indonesia支局とネットワークを形成している)とジャカルタ・チャンネル(首都圏の番組を中心として英語ニュースなどを放映)が存在する。Televisi Republik Indonesiaの番組はすべて局内で制作されている。外国との番組の交換はあるが、予算不足のため、海外からの番組の購入や現地のプロダクションへの外注などは行われていない。

5. インドネシアにおける公共放送とその視聴者

Televisi Republik Indonesiaの正式な視聴者調査はまだ実施されていないが、 AGBニールセンの調査では「ラマダンと北京オリンピックの期間中にTelevisi Republik Indonesiaの視聴者は増加した」と報告されている。視聴者数は政府放送局だったころとほぼ同じにとどまっている。資金不足、政府機関の創造性の欠如など、これには多くの要因がある。AGBニールセンの調査結果を見てみよう。 ラマダンの最初の2週間(2008年9月1-14日)、視聴者の数は約20%増加した。ラマダンの前の2週間(2008年8月18-31日)にTelevisi Republik Indonesiaを視聴した人の平均数はテレビ視聴者全体の10.9%、実数にして460万人だった(10都市での5歳以上の視聴者を対象とした調査)。これに対し、ラマダンが始まってからの2週間では、視聴率は全体の13.1%、平均視聴者数は560万人となった。サフール(ラマダン期間中の朝食)時の視聴率は11.1%で、視聴者数はおよそ470万人だった。

宗教番組は放送時間全体の3%から6%へと増加したが、その視聴は全視聴時間の1%から3%へと伸びたのにとどまる。連続番組は放送時間全体の8%から11%へと増加し、視聴時間も23%から33%へと増加した。視聴者は1日につきおよそ1時間連続番組を見ていたことになる。ラマダン開始期には視聴習慣に変化が見られるにもかかわらず、視聴率が最高になったのは依然として午後7時から9時のプライムタイムであり、26.1%であった(5歳以上の視聴者1110万人)。ただし、この時間帯の視聴者数は通常時に比べれば少ない(通常時のこの時間帯の視聴率は26.6%、視聴者数は約1130万人)。これらはすべての全国テレビ局の数字である。

一方、北京オリンピックの期間中(2008年8月8-24日)、Televisi Republik Indonesiaの視聴率は0.7%から1.7%へと上昇した。8月8日の開会式のライブ放送は10都市での視聴者数を引き上げた。午後7時から11時までのTelevisi Republik Indonesiaの視聴率は全視聴者の0.6% to 2.4%へと上昇した。

しかし、2008年8月24日の北京オリンピック閉会式になると、視聴者の熱意も冷めてきて、午後7時から9時までの時間帯の視聴率は1.5%にすぎなかった。これでもオリンピック前の通常時の視聴率である0.8%よりは大きい数字である。

2008年8月9日から23日に放映されたオリンピック競技の視聴率は約1.3%であった。これも通常時のこの時間帯の視聴率である0.6%より高い数字となっている。Televisi Republik Indonesiaの画像の不鮮明さにもかかわらず(他の放送がUHFであるのに対し、この放送はVHFであった)、「Televisi Republik Indonesiaが独占的に放映したこの世界的なイベントを見るためにこうした事情は度外視されたようだ」(AGBニールセン)。

6. インドネシアにおける公共放送の課題

アジアの公共放送は欧州や米国と大きく異なっている。情報、教育、娯楽に関してアジアの放送は独自の文化と価値観を持っている。欧州や米国が独自の民主主義を発展させてきたのと同様である。世界のどの国にもあてはまる理想的な民主主義というものはない。米国でさえインドネシア、日本、その他の国のモデルではありえない。アジアの公共放送はそれぞれの国で多くの視聴者を引きつけるための特別な役割を担っている。創造的であるだけでなく、プロフェッショナルであり、強い資金力を持つことが求められる。

かつてのインドネシアの公共放送が非常に悪い状態であったことは否定の余地がない。どうしてだろうか。

政府放送局から公共放送局への改変には当初からおかしい点があった。この改変は政治的経済的ないくつかの利益団体が無理矢理に立法化したものである。1945年の独立時に創設されたRadio Republik IndonesiaやTelevisi Republik IndonesiaはNHKやKBSに近いものだった。Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaは独裁政府によってコントロールされていたとはいえ、国民の役に立っていた。放送に関する32/2002法や公共放送に関する政府規則11/ 2005に従って国民の利益とニーズを満たす公共放送を確立するのは容易なことではない。

公共放送局は視聴者のアイデンティティ、経済成長、出生率の増減に応じて対応し、放送によって影響を受ける社会の価値観の変化を感知しなければならない。実際、まだ期待に応えるような状態からはほど遠い。Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaの政府組織から公共機関への構造的な改変は、スタッフが公務員であることから困難に直面している。政府予算は非常に限られており、広告も可能だが獲得は容易でなく、国民からの寄付もない。公共放送局(Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesia)は「表面の皮」を変えただけで、内部的にも外部的にも根本的には変わっていない。公共放送局のベースとなるビジョンもかつてと同じであり、「国民の生活、インテリジェンス、価値を高めるという目的のもと、インドネシア国民から第一に選択されるメディアとなる」となっている(2006-2011年に向けたTVRIの一般ポリシー概要)。

2001年から2004年にかけてTelevisi Republik Indonesiaの会長だったSumita Tobing氏は「公共放送局としてのTelevisi Republik Indonesiaは32/2002法と公共放送に関する政府規則11/2005のもとでは生き残れないだろう」と述べている。同氏は言う。「こうしたポリシーのもとに競争するのは不可能だ。テレビ局のベースはキャパシティにあり、公共放送局といえども例外でない」(Sumita Tobing氏との電話インタビュー)。

同じ危惧はTelevisi Republik Indonesia のニュース番組ディレクターであるYon Anwar氏からも表明されている。同氏が危惧しているのはこの生き残りであり、特にニュース番組の将来である。「年間予算は8カ月しかもたず、生き残るには別途の財源が必要になる。この予算で毎年52のライブ番組を流し、そのほかの番組もまかなっていかなければならない」(Yon Anwar氏との対面インタビュー)。 制度の法的改革は財源だけに焦点を合わせており、組織のカルチャーの改革、とりわけ人材には光が当てられていない。

Radio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaの番組は社会のニーズと関心を満たすという期待からはほど遠い。公共放送と民間放送は番組で競い合っている。実際、公共放送局は民間放送局と同様に独自の視聴者を抱え、財源を確保しようとしている。しかし、公共放送についてはインドネシアの国民各層や各地域が同様にアクセスできるようになっていなければならない。これを実現するうえでRadio Republik IndonesiaとTelevisi Republik Indonesiaに求められるのは、機器や技術システムの最新化に加えて自分たちのカルチャーと価値観を一新することである。このためには巨額の投資が必要であり、政府だけではなく一般市民のサポートが不可欠になる。Televisi Republik IndonesiaとRadio Republik Indonesiaに視聴者を引き寄せるには、これらの放送局の側で番組の内容と質の一新に向けてラディカルで進歩的な政治的意志を働かせなければならない。現在のところ、どちらの放送局もポリシーらしきものを示しておらず、その実現にもほど遠い。

参考資料:

  1. Blue print general policy of broadcaster policy of TVRI, for 2006-2011

  2. McQuail, Denis (2000), Mass Communication Theory,4th,ed London : Sage Publication

  3. Ndolu, Frederik. (2004). “Management of News Program in Public Service Broadcasting Case Study of Radio Republik Indonesia (RADIO REPUBLIK INDONESIA)”. 論文 インドネシア大学大学院コミュニケーション・プログラム

  4. Gazali, Effendi & Victor Menayang. (2002). “Public and Community Broadcasting in Indonesia : A Necessary Alternative”. 資料 「メディアのグローバル化とインドネシアの地域組織」に関する国際アジア研究所(International Institute for Asian Studies:IIAS)ワークショップで発表 (ライデン、オランダ)。放送に関する32/2002法

  5. 公共放送に関する政府規則11/2005

  6. www.encylopedia4u.com/publik-broadcasting.html

  7. www.tvri.co.id

  8. www.rri-online.com

  9. http://www.kpi.go.id/index.php?etats=detail&nid=356

  10. http://www.pppi.or.id/pdf/AGBNielsenNewsletterSeptEng.pdf

  11. ※リンク先は掲載時のものです。現在は存在しないか変更されている可能性があります。

Frederik Ndolu

Indonesiasatsu Communication 会長

2004年インドネシア大学コミュニケーション分野でS2学位
1994年国立行政学院行政(Public Administration of Academic of State Public Administration)S1学位

現在:Indonesiasatu Communication会長-政治コミュニケーション専門
現在:ジャカルタのインドネシア・ビジネス情報学院(Business Informatics Indonesia:IBii)で心理学コミュニケーション講師
2006年から今日まで:OPOSISI(QTVのトークショー)のホスト
2005年から今日まで: QTVの番組ディレクター
2004年:国のリーダーをテーマとするWebサイト www.indonesiasatu.comを開設
2001-2002年:「自治地域」(TVRIの対話型番組)のホスト
1997-2004年:RRIドメスティック・サービスのプロデューサー兼ニュースキャスター
1987-1997年:「インドネシアの声」のニュースエディター、プロデューサー、ニュースキャスター、インタービュワー
1984-2004年:情報合同省(Joint Department of information)の公務員

[海外取材]
1992年にヤセール・アラファトとイラクのタルハ・ヤシン副大統領、1995年に米国大統領候補アーレン・スペクター、2003年にインドネシアのメガワティ・スカルノプトゥリ大統領など、世界の数多くのリーダーをインタビュー
1994年にノルウェーのオスロで中東問題を巡って開かれたヤセール・アラファト、イツハク・ラビン、ビル・クリントンの秘密の三者会談、数多くのAPECリーダーの会談、G-15会議、サミット会議、OPECの会議など、さまざまな会談を取材
ニューヨークの国連本部で開かれた東ティモール問題を巡るインドネシア、国連、ポルトガルの三者会談を取材
1995年ワシントンDCでラジオ報道のための特別コースに参加
1999年マレーシアのクアラルンプールでUNICEFが主催した子供の権利に関する特別ワークショップに参加

[著作]
DIA : A Picture of Megawati Soekarnoputri-Magnum Publishing刊, 2004年

これまでのシンポジウム

Copyright Japan Media Communication Center All rights reserved. Unauthorized copy of these pages is prohibited.