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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第22回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2014年3月~12月

アジア太平洋地域のテレビ局とインターネット

閉会にあたって

村神 昭
一般財団法人放送番組国際交流センター 専務理事

 「アジア太平洋地域のテレビ局とインターネット」と題して行った第22回のJAMCOオンラインシンポジウムは、メディアの現状と近未来を考える上で深く示唆に富んだ内容となったばかりでなく、日本のテレビ番組の国際発信というJAMCOの役割にとって、インターネットとの関係が、重い課題であり続けることをうかがわせるものであった。
 各国の研究者からこのWEBシンポジウムにいただいた報告によれば、タイでは「大手テレビ局のウェブサイトにアクセスすれば、現在放送中の番組やアーカイブされた放送を視聴することができる。」(Sasiphan Bilmanochさん)とのことだ。マレーシアからは「RTMのライブストリーム放送は現在試験的に運用されている。ライブストリーム放送は2006年初頭に始まり、インターネットまたはIPを通じて視聴者層を拡大することを唯一の目的としていた。現在誰もが、ネット上で好きなラジオやテレビ番組を視聴することができる。2012年にはライブストリーミングサービスが拡充され、(中略)既存の番組や試験的番組、ニッチな視聴者層に向けた番組を視聴することができるようになった。」(Hazizul Jaya Ab Rahimさん, Abdul Manap Abdul Hamidさん)という報告をいただいている。スリランカでは、国内の武力紛争を逃れて海外に住んでいる国民が多く、「テレビ局が番組を世界中に向けて放送するためインターネットの利用を開始してから10年になる。」(Mohamed Shareef ASEESさん)そうだ。
  アジアの放送局のインターネット利用は、これらの国の放送局が特別な事例ではない。私は、最近、中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタン、キルギスの放送局を訪問したが、いずれもインターネットの利用はごく普通の伝送手段という説明を受けた。
 一方で、太平洋島嶼国は「大半ではブロードバンドと言えば128kbpsが主流であり、それを使用したWi-Fiホットスポットでは一般的な日本のウェブサイトの立ち上げにさえ時間がかかり、フリーズしてしまうことも珍しくはない。そのようなネットワークではストリーミングが難しく、映像の視聴になると一部を除いてはほぼ絶望的である。」(プラマニク カデル博さん)という状況でデジタルデバイドの実態が裏付けられた。
 外国に相当量のテレビ番組を販売ないし無償提供しようという国ではどうか、韓国の実情を紹介いただいた。「地上波放送局がオンラインで番組サービスを始めてから13年が過ぎようとしている。」(金 美林さん)とのことで、主要放送局は、国内での同時再放送およびVODを行っていることも明らかにされている。
 翻って、日本での動きはどうか。放送法の改正をうけて、NHKは災害や選挙の報道のほか、スポーツの生中継の一部の同時送信や受信契約者から募集した一定人数を対象にした放送の時間と期間を限定した同時送信を試験的に実施することをもりこんだインターネット実施基準案をまとめ2014年11月25日総務省に認可を申請した。また、民間放送ではインターネットを使ったテレビ番組配信の一つとして、見逃し視聴サービスについての検討を在京キー5局で行うことにしている。
 日本では、インターネットの利用をめぐって意見がまとまっているとは言えず、方向性と時間軸は不透明なところが少なくない。アジアの放送局では確実にインターネット利用が進む中、インターネット利用の権利がついていない放送番組のアジアの放送局への展開は、その分ハードルが高くなるのは避けられないのではないか。海外の衛星放送のチャンネルを買い取って、放送するのでなく、視聴者からの接触の機会がより多い各国の基幹的な放送局で日本のテレビ番組を放送してもらうという方法をとるなら、高いハードルを飛ぶか潜るか、海外発信の強化が日本の課題である以上、この問題はどこかで解答をさがす必要があるだろう。
  シンポジウムの閉会にあたり、このシンポジウムを中心なって構成していただいた東京大学名誉教授の小林宏一先生、大東文化大学教授の山下東子先生をはじめ、ご参加いただいた報告者、討議者、そして当サイトをご覧いただいた皆様に厚く感謝申し上げます。

村神 昭

一般財団法人放送番組国際交流センター 専務理事

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