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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第24回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2016年1月~2016年8月

アジアのテレビ放送局の現状と課題

キルギス共和国のメディア産業

A. アサンベコワ
キルギス共和国公共テレビ・ラジオ放送協会(КТРК) 国際関係部

本調査のテーマは、『キルギス共和国のメディア産業』である。
研究は我が国の主要チャンネル‐キルギス共和国公共テレビ・ラジオ放送協会(以下KTRKとする)を例として行われた。
KTRKの研究にあたっては、キルギスの他のマスメディアの活動にも適用されている法令と国際法を考慮し、統計データおよび公的報告書を活用した。

『キルギス共和国におけるメディア産業』というテーマは高い関心を集めるに違いない。また、キルギスという海外ではほとんど知られていない国が、ここで取り上げた放送チャンネルの事例でみられるような発展を遂げていることに興味を持っていただけるに違いない。そこに本調査の意義があると考える。
オンラインシンポジウムの聴衆が国際的であることを考慮して、最初に、キルギスについての情報を、国の歴史やジャーナリズムの歴史を含めて簡単にお話ししたい。


キルギスの歴史


1760年代の半ばの南キルギス、その後1820-1830年代には北方のキルギス人たちはコカンド汗国の影響下に入る。18世紀の終わりから19世紀の始まりにかけて、北方キルギス系の種族は独自にロシアとの関係を築き始めた。1785年にはサルバグイシュのビー アタケ バートゥイルは、ロシアに向けて初めての使者を送った。1855年にはブグ族はロシア帝国の臣民になったが、それがキルギス併合への始まりとなった。1868年にキルギスの北部は最終的にロシアに併合され、南部は1876年の反コカンド蜂起の弾圧の後に征服された。
併合の過程で少しずつ、キルギス人たちの経済の仕組みが変わっていった。地理、自然、歴史、キルギス民族の文化などを学び始めるという進歩的な現象が見られた。しかしながら帝政ロシアの専制君主体制の植民地政策は、1916年の蜂起につながり、それは悲劇に終わった。


ソビエト連邦時代
ロシアの10月革命(1917年)、社会主義体制の確立、民族自決権とソビエト連邦の成立などは、キルギス史の中で歴史的に大きな影響を与えるものとなった。
カラ‐キルギス自治州の成立(1924年10月14日)とともに、ソビエト式のキルギス国家が発展し、政治的な困難を伴うことなく1991年には完全な主権を獲得した。
社会主義の時代、キルギスは工業国、農業国として発展した。また教育の主要な方向性の一つとして、非識字者をなくし、新しい教育システムを創設、高等ならびに中等教育機関をうまく機能させて、専門知識を持つ人材を輩出するようになった。


キルギスの独立
ソビエト連邦崩壊後の1991年、キルギス国民の何世紀にもわたる歴史に新しい1ページが加わることになる。8月31日、キルギスは主権国家であることを宣言した。それまでの共産党中央委員会の全体主義‐独裁主義的な体制は、独裁‐民主主義体制に代わった。いわゆる国民共有(国有)という形から民主主義統治の原則が根付き、私有化を最優先課題としながら、様々な所有の形態が定着した。
政治社会的な面では、共和国は国家としての属性をすべて獲得し、同等の権利を持った国際社会の一員となった。しかしながら旧ソ連邦との経済的な断絶は、共和国に負の影響を与えた。1993年、インフレが高じたため自国の通貨(ソム)が導入され、それによって、独自の財政、および金融政策をとることができるようになった。同じ年に主権国家キルギスとして初めての憲法が制定された。
深刻な汚職、社会の急激な変化、犯罪化、権力の独裁主義などによって、キルギスでは二度に渡って現政権の転覆に至った(2005年3月24日および2010年4月7日)。キルギスには、暫定的臨時政府を経て議会制共和国が成立した。ジョゴルク・ケネシュに広汎な全権が委任された。
複雑な社会‐経済状況から、キルギスは多角的な方向性を持った政策を行うことを余儀なくされ、適切な投資をよびこむために不可欠な対外関係を築いている。今では国際連合(UN),世界貿易機関、欧州安全協力機構(OSCE),独立国家共同体(CIS),上海条約機構(SCO),関税同盟などの一員となっている。


キルギスでのマスメディアの発達の歴史


キルギスは、ほかのすべての旧ソビエト社会主義共和国と同様に、1991年の国家主権の獲得を境に、質的に新しいメディアを形成していくことになった。
1991年以降、わが国のマスメディアは、量的にも質的にも大きく変化した。キルギスの独立時には約50の新聞が発刊されていたのみで、テレビのチャンネルとラジオについては国営放送のみであった。そしてそれらは国と共産党の厳しい統制のもとにあった。
キルギスのマスメディアの発展の歴史は変化に富んでいる。特に、マスメディアに対する政権の態度が変化することが特徴的である。

2004年までのキルギスのメディアの発展の歴史は、以下の4段階に分けられる:
‐第一段階 1991-1992年 -報道の自由の宣言
‐第二段階 1993-1995年 -政権との関係の転換、自らの役割と機能の転換
‐第三段階 1996-1999年 -政権との決定的な離別
‐第四段階 1999-2004年 -メディア所有権の再分配とメディアホールディングスの形成による集中化

2005年3月に民衆の騒乱によって政権の交代が行われた。この期間の国営と体制に寄らない出版物の間での情報戦争の激化も特徴的だといえよう。
マスメディアの発達における2005年から今日に至るまでの期間を第5段階としてもよいであろう。それはメディア‐所有権の新しい再分配と集中化の時代と呼ぶことができる。
キルギスのマスメディアの歴史は、このような時系列的なステージに基づいて考察することができる。


キルギスのジャーナリズムの目覚しい発展の時代 1991-1992年
1980年代の終わりから90年代初めには、あらゆるソビエト‐社会主義的なものが否定され、民主主義のリベラルな価値観に基づく新しい政治システムが形作られて、経済には市場経済のメカニズムが導入されていく。
独立初期の頃に、初めて民間のテレビ局が現れた。ビシュケク市の『ピラミダ(ピラミッド)』と、オシ市の『オシ‐TV』、首都のラジオ局『アルマズ』である。しかしながら新しいテレビ・ラジオのマスメディアの成長は、活字媒体ほど急激なものではなかった。その主たる原因は、巨額の資金投入が必要であること、小さなテレビ・ラジオ局運営の経験がないことと同時に、この分野で経験豊富なスタッフが足りないことである。国がラジオ、テレビ分野での独占企業だったからである。活字媒体と異なり、最初の民間テレビ・ラジオ局はまず第一に利益を追求した。独自の報道、分析番組が登場するのはずっと後になってからである。当時キルギスの都市にはすでに多くのケーブルスタジオが林立状態であった。それらのコンテンツは主に映画、アニメ、そしてコマーシャルだった。それらのうちのいくつかはその後新しいテレビ局や、種々のプロダクションスタジオ開設につながった。1991年から1993年にかけてはキルギスのジャーナリズムにおいて黄金時代となった。


マスメディアと権力の関係の急変 1993-1995年
反体制派と政府側のマスメディアの情報戦争の開始。1993-1995年にかけて、民主主義的原則にのっとった国の統治が後退し始める。大統領側は議会制から大統領制に国を変える方向へと進み、1994年には議会が解散された。マスメディアは、政権当局の計画を邪魔することも、また援助することもできる立場にいた。国の大統領の一存で任命されたり、『解任』されたりする国営新聞とラジオ・テレビ局のトップは、民間マスメディアとともに戦いを開始した。


マスメディア安寧の時代の終焉 1996-1999年
ジャーナリストたちによる訴訟と裁判そして告発の波が訪れた。権力当局はマスメディアを抑圧するべく攻撃した。KOORT(キルギス社会教育ラジオおよびテレビ)、NBT(独立ビシュケクテレビ)、『ラブラジオ』、『夕刊ビシュケク』紙のような主要なメディアが初代大統領の一族の支配下に入る。2004年までにはその他の魅力あるメディアも手中に収めようと試みる‐テレビ・ラジオ局『ピラミダ』だ。この事実は、2005年2月にキルギス大統領アスカル・アカエフへ送った公開書簡で、国際機関『ヒューマンライツウォッチ』のヨーロッパおよび中央アジア支部長代理のレイチェル・デンバーが指摘している。
テレビ・ラジオのマスメディアは完全に国防大臣が長を務める国立周波数委員会に依存していた。この委員会はいつでもメディア業者のラジオ周波数の利用権をはく奪することができ、周波数を変えたり、1メートルのラジオ周波帯からデシメートルの周波帯に追いやることもできた。
2005年と2009年に緊迫した政治事件が起こった時には、政権当局は自分たちの支配下にあるマスメディアを反体制派との戦いに巧妙かつ盛んに利用することがはっきりした。それに際しては、前ソビエト時代の政権のやり方が広く活用される。同じ理由から、公共テレビ放送の創設という構想の実現も困難を伴いながら進められている。この問題は前大統領の統治の頃からすでに提起されていた。社会は、いま国で起きている出来事について、客観的で正確に報道するマスメディアを必要としていた。しかしアスカル・アカエフ体制にはそれは必要なかった。2005年3月24日以降、ついに公共テレビ構想は実現されるかに思えた。そして新政権は一度ならずそれに「賛成」を表明している。2005年6月21日、当時の大統領代行クルマンベク・バキエフによって、国家戦略・汚職との戦い実施行動計画が承認されたが、その中で反汚職政策の一つとして、国営テレビ・ラジオ放送協会を公共テレビ・ラジオ局に再編成するという提案がなされた。公共放送を創設したいという願いを表明してから2年たってようやく、2007年3月に、キルギス共和国大統領のクルマンベク・バキエフは『国営テレビ・ラジオ放送協会(KTRK)について』という法律に署名したが、それはメディア組織と議員が共同で作成し、2006年6月8日に議会によって承認されていたものだ。公共放送創設の妨げとなるものがやっとなくなった。けれどもオブザーバー評議会(NS)のメンバーの決定は、意図的に半年近く遅らされた。このようにして選挙戦の時期にはKTRKは再び政権の管理下に置かれることになったのである。
2005年以降はインターネットが急速に発達し、国の社会‐政治的な状況に与える影響が強まった時期となった。インターネットを通して、人々はリアルタイムでキルギスで起きていることを知ることができる。同様に、インターネットは伝統的なマスメディアとは異なり、政権当局からの管理や圧力に屈しにくく、国の言論の自由の発達を支える可能性がある。
キルギスのジャーナリズムとマスメディアは、独立の時代に共産党ジャーナリズムから民主主義ジャーナリズムへ、大きな発展を遂げた。民主主義化のプロセスはもう後戻りはできない。
キルギスは、政治体制の二回目の崩壊を経て、議会制統治が採択された中央アジアの最初の国となった。それに伴い、キルギスのマスメディアの活動は、大きな変貌を遂げた。

現在、以下の主要テレビ局が活動している:

公共テレビ・ラジオ協会:
 ‐キルギス共和国公共テレビ・ラジオ放送協会(KTRK);
 ‐公共テレビ・ラジオ放送局『ElTR』
国営テレビ・ラジオ局:(7つの地方テレビ局)
 ‐チュイ:
 ‐タラス;
 ‐イッスイク‐クリ;
 ‐ナルイン;
 ‐オシ;
 ‐バトケン;
 ‐ジャヤラル‐アバド;
民間テレビ・ラジオ局:(40ほどが登録されていて、機能しているのは約15社)
 ‐HBT(独立ビシュケクテレビ);
 ‐NTS(ニューテレビネット);
 ‐有限責任テレビ・ラジオ局『ピラミダ』
 ‐非公開株式会社『第五チャンネル』
‐STS テレビチャンネル;
 ‐テレビ・ラジオ局 オシTV;
 ‐アリッペTV
国際放送:
 -CIS諸国非公開株式テレビ・ラジオ局『ミール』


放送法と規制


キルギスのマスメディアは、下記の権利に関わる多数の法律で規制されている:
  1. 憲法上の権利(不可分の人権並びに国民の権利としての表現の自由;マスメディアの自由の権利)
  2. 国際法(世界人権宣言‐人権及び国民の不可分の権利としての表現の自由)
  3. マスメディアに関する特別法(マスメディア組織の創設と活動を規定する)
  4. 民法(名誉棄損、精神的損害賠償などのマスメディアの素材発表に関する問題を規定する)
  5. 選挙関連法(選挙法およびその他の選挙戦の際のマスメディアへのアクセスを規定する法規を含む)
  6. 刑法(裁判権と責任を有する、完全な権利主体としてのジャーナリスト)
  7. 労働法(労働者を利益の公共性に基づいて統合する組織としてのマスメディア、ならびにその成員の労働、社会‐経済的権利と利益を守る目的で創設されるマスメディアの労働組合や労働者連合)
  8. 税法(課税対象となる経済的な主体としてのマスメディア)
  9. 関税法(しかるべき義務と、活動に関わる関税規則の違反に対する責任を負って、生産‐経済活動をする権利を有する主体としてのマスメディア)
  10. 財政法(マスメディアの収入源について、ならびに入った資金と支払った資金の規模に対する財務機関の監督)

これらの法律の他に、下記の法律が存在し、程度の違いはあるがマスメディアの活動に影響を与えている:
‐1997年 『ライセンスに関する法』
‐1998年 『電子的および郵便による通信に関する法』
‐1998年 『コマーシャルに関する法』
-1998年 『著作権および関連する権利についての法』
‐1999年 『情報化に関する法』
‐1999年 『科学技術情報システムに関する法』
‐2007年 『国営テレビ・ラジオ放送協会に関する法』
‐2007年 『キルギス共和国ジョゴルク・ケネシュの活動の国営マスメディアにおける放送規定に関する法』

マスメディアの活動に関わる規範は、キルギス共和国民法および刑法、又しかるべき裁判法、税法、種々のキルギス共和国大統領令などにも規定される。
KTRKもこれらの法的基盤の規定を受けるが、それらはマスメディアを通じた報道を組織すること全般の法的、経済的そして社会的基盤を定めるものであり、マスメディアが自由に機能することをめざし、国家機関、社会的団体、企業、組織や国民との関係を規制するものである。


災害報道


キルギスは自然災害の影響を大きく受ける国である。

-2014年3月3日付第112号『キルギス共和国国民に非常事態の通知と通報をするためのテレビ・ラジオチャンネルの利用規定についての法令』や
-キルギス共和国非常事態省との協力に関する覚書、に則ってKTRKは、非常事態に関する情報と警告を報道する。


キルギスのメディア指標


キルギス全体での平均的な毎日の視聴者の特徴を示すメディア指標を精査すると、視聴者に最も人気があるテレビチャンネルは最初の国営テレビチャンネル‐KTRKであるといえる。このチャンネルの平均的な毎日の視聴者数は2,194,823名である。二番目に来るのがロシアの第一チャンネル(ORT)で、1,197,141名の視聴者がいる。全体としてロシアのテレビチャンネルはキルギスで人気が高いということが耳目を引く。三番目にくるのはキルギスの最大のテレビ局の一つ、ElTRで、平均して1,186,922名の視聴者がいる。四位につけているのがロシアのテレビチャンネル、ロシアRTRでキルギス全域に中継されている。このテレビチャンネルは平均して毎日529,417名の視聴者が見ている。


海外放送と国際ドナー


主権を獲得した黎明期に、キルギスで住民への情報提供分野で支配的な地位をしめたのはロシアのマスメディアだった。この状況は多くの面でソビエト時代の遺産であった。国全土にわたって共和国のチャンネルと同等にロシアの第1チャンネルが放送を行っており、キルギス人はロシアの新聞を大量に講読していて、キルギスのマスメディアの購読に占める割合は小さなものであった。わが共和国の住人は、しばしば、自国の生活についてよりもロシアの生活について多く知っていた。しかしながら、キルギスで、まず第一にキルギス語の独立系新聞の数が増えたことやキルギスの住民の生活を悪化させた経済問題などにより、その後、キルギスにおけるロシアのマスメディアの存在は著しく減少した。
地元のテレビ・ラジオのニュースチャンネルは、主として共和国内や地元の出来事に力点を置いて活動しており、海外のできごとについては キルギスの人々はロシアのチャンネルを通じて情報を得ている。つまり、彼らは、世界で起きている出来事についての多くを「モスクワの視点」で見ているのである。しかし、最近は、この分野でも本質的な変化がみられる。地方テレビチャンネルの多くは『ユーロニュース』『ディスカバリー』などをますます盛んに放送するようになっている。また、ラジオでは『ドイツの波』、『アメリカの声』、『ラジオ・リバティ』(『アザットィク』)、『BBC』などのようなロシア以外のマスメディアの中継を広く行っている。特に注目すべきはキルギス語で放送している『アザットィク』(『ラジオ・リバティ』)と『BBC』ラジオの活動である。『ラジオ・リバティ』のキルギス語放送は1953年3月18日に始まった。ソビエト政権時代にはラジオ『アザットィク』は、実質、キルギス人にとって国内外の状況を知る唯一のオルターナティブな情報源であった。同様に、ラジオはキルギスに民主主義の価値観の形成とその強化に大きな貢献を果たした。ラジオ『アザットィク』の事務所は、独立を獲得してキルギスで民主国家が創設され始めたときに開設された。しかし、新政権と『アザットィク』との関係は常にかげりのないものだったわけではない。ラジオは自らの原則にしたがって、国民に国内の実情を伝え続けた。
今日、ラジオ番組『アザットィク』は、KTRKの第二チャンネルで毎日2時間、『アルマズ』(ビシュケクとナルイン)ラジオと『サラム』(バトケン)ラジオで1時間半聞くことができる。同時に、ラジオはインターネットサイトを持っていて、ラジオの番組を文章で読むことができ、又同様に聞くこともできる。その他に『アザットィク』ラジオはKTRKのチャンネルと共同で『ウインガスイズ スロー』(『不都合な質問』)と『アザットィク+』いうテレビプロジェクトを持っている。『アザットィク』には、『ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティ』のラジオ局の中では、旧ソ連圏の中で一番多くのリスナーがいる。
BBCラジオは1996年6月3日からキルギス語放送を開始した。最初の放送は5分間だけであった。今日では30分になった。『アザットィク』と『BBC』ラジオの放送は、キルギスのジャーナリズムにとって、国内の出来事を報道するにあたってならうべきジャーナリズムの国際的な基準となっている。キルギスの国境付近の地方ではロシアやその他の国際放送、アメリカなどのマスメディアのほかに、カザフ語、ウズベク語、タジク語のチャンネルが放送されている。北部のチュイ州やビシュケク市では『エラルナ』や『ハバル』、『KTK』などのようなカザフのテレビチャンネルが中継されている。
その他の地方、特に国の南部では、状況はもっと緊迫している。近隣諸国の番組が多く放送されているキルギスの村の住民たちは、隣国の番組に対する高い関心を表明している。キルギスのものは唯一国営チャンネルのみで、その番組はキルギスの国境付近の村々の住民には人気がない。それに加えて、南部地方には中継器が無いため、キルギスのテレビを何一つ見られず、同時に大量の隣国のテレビチャンネルが見られる地域がある。結果として、これらの地域のキルギスの住民は、キルギスよりも近隣諸国の生活の方をよく知っていて、その結果自国の出来事についてのニュースをウズベクやタジクのチャンネルから視聴しているのである。このような状況は、キルギスの電子マスメディアの素材面、技術面での弱さの表れである。
キルギスのジャーナリストのプロフェッショナリズムの脆弱性もひと役買っている。国の力だけではこの問題を解決することはできない。このような状況において、西側の諸機関による我が国のマスメディアに対する助成金サポートが比類なき役割を果たしている。最大規模かつ成果を上げている援助の形態は、ユーサイド(USAID)、インターニュースネットワーク、ソロス基金、英国戦争と平和報道研究所(IWPR)、スイス開発協力局(SDC)、フリーダムハウス、PROON、欧州安全保障協力機構(OSCE)、在キルギスアメリカ合衆国大使館付属民主主義委員会、『ユーラシア』基金その他である。

今日KTRKのチャンネルでは次の海外番組を中継放送している:

‐BBC:毎日、放送される2つのテレビ番組と毎日、放送されるラジオニュースの中継;
‐『アザットィク メディア』ラジオ・テレビ放送管理会議:毎日放送される2つのテレビ番組と毎日放送されるラジオニュース中継;
‐CNR中国人民ラジオ:毎日放送さされるラジオ音楽番組中継
‐CCTV- ロシア:毎日放送されるテレビニュース番組の中継

参考まで手短に、キルギスで実現され、今現在継続実施されているプロジェクトの類似の例を引いておく。
『インターニュースネットワーク』のプロジェクト アメリカの非政府組織『インターネット‐ネットワーク』の事務所はキルギスで1995年から活動している。非政府電子マスメディアに対し、少額の助成金を出すことで技術援助をしたり、若いジャーナリストに対してトレーニングを行い、法案のロビー活動やジャーナリスティックな研究に資金づけを行い、このようなニュース交流についてよく知られたプログラムを行ってきた。また、現在も行っている。
ソロス基金のプロジェクト キルギスでは1993年から活動している。毎年民間部門で少額の助成金のコンクールを通じてマスメディアに財政的援助を行っている。ジャーナリストに国際会議や実習のための外国旅行の費用を払っている。新聞とテレビ・ラジオ局の新人ジャーナリストのために研修セミナーを行っている。マスメディア問題に関する共和国レベルの大きな会議の実施に資金づけをする。この基金では、言論と出版の自由の原則の強化を目指すイニシアチブをサポートする伝統的なアプローチやメソッドがすでに出来上がっている。
英国戦争と平和報道研究所(IWPR) キルギスでは2000年から活動している。海外、および地元の読者のために共和国の生活の中で最も緊迫した問題についてのレポルタージュを制作。訓練やセミナー、会議を通じて、ジャーナリストに仕事の国際基準を教えている。これらのイベントは従来のやり方では行われず、最大の効果を出すために独自の細かな基準に則っている。
スイス開発協力局(SDC) キルギスのマスメディア業界において1999年からスイスの民間非政府組織SIMERAを通じて活動していて、2005年までは、移行期にあったマスメディアの分野でプロジェクトの実施に携わった。とくにSIMERAはフェルガン渓谷における民族間問題についての会議『イスラムとマスメディア』、『中央アジアの自然資源』のような地域会議を行った。
『フリーダムハウス』のプロジェクト キルギスでは2002年9月に活動開始。マスメディアの分野で ジャーナリストと法律家に活字媒体の刊行物に対する法的責任の問題についての教育を組織、実施している。『フリーダムハウス』のもっとも意義のあるプロジェクトは、2003年11月にビシュケクに独立系印刷所を設立したことだと考えられ、それはアメリカ合衆国民主主義および人権と労働局の資金供与で行われた。このプロジェクトは、ノルウェー王立外務省と開かれた社会研究所からのサポートを受けた。
『ユーラシア基金』プロジェクト キルギスでの活動は1993年に開始。地方紙(国立新聞を含む)、テレビ・ラジオに対する財政支援を行った。しかしこの基金は、マスメディアの分野において、特に目立った社会的な意義のあるプロジェクトは行わなかった。ほかの基金に比べると人気が低い。フェルガン渓谷での活動に尽力し、労働移民や国境を超える取引、関税障壁、汚職などのような緊迫した問題に力点を置いている。
在キルギスアメリカ大使館付属民主委員会のプロジェクト 1995年からプロジェクトを開始。独立系新聞の生成の初期は、コンピューターや事務機器類の装備でサポートをした。ジャーナリスティックな市民組織によって催される会議やセミナーに資金提供を行った。2000年の議会と大統領選挙の期間、ならびに2007年の期日前議会選挙の際は、電子および活字マスメディアの活動のモニタリングに資金供与した。新しい独立系電子マスメディアの発展のために技術的な助成金を提供した。合衆国国立民主主義研究所のプロジェクトはキルギスで1994年に活動を開始した。
ユーサイド(USAID)プロジェクト 1995年からマスメディアサポートの活動を開始。すでにいくつかの重要なプロジェクトが実施され、それらは主としてインターニュースとカウンターパートコンソーシアムの仲介で行われた。 独立系新聞、テレビ局、ラジオ、通信社の技術的なサポートを行った。トレーニング、会議、セミナー、マスメディア問題の円卓会議などの資金づけを行っている。2003年から2007年までの最大のものは、共和国間のプロジェクト『中央アジア諸国における言論の自由の民主主義原則の保護』だった。その枠組みの中でキルギスのマスメディア分野におけるモニタリングが行われた。
PROONのプロジェクト(国連の開発計画) この組織はマスメディアの分野で政府寄りのイニシアチブに資金供与した。特に国連のお金で2003年9月に国営マスメディアの参加で会議が行われ、そこでメディア評議会が創設され、大統領の報道局によってその仕組みが定められた。
『エベルタ』基金と『アデナウアー』基金のプロジェクト ドイツのエベルタ基金はキルギスで1993年から活動を開始。マスメディアの分野でその間2つの、ある程度知られている社会プロジェクトを行った。1997年ドイツの専門家ゲルハルド・プフラウベルは法案を二つ助言した(『情報へのアプローチの保障と自由』と『ジャーナリストの職業活動の保護』)。大統領のイニシアチブで議会で承認された。2002年、この基金は、開発の総合基本計画の状況について地方のジャーナリストへ説明する扇動的な活動に資金供与し、民主主義的な世論から批判をあびた。
欧州安全保障協力機構(OSCE)のプロジェクト マスメディアの分野では1999年ビシュケクで第1回国際『中央アジアマスメディア』会議が開催された時、活動をスタート。その後『地域のジャーナリストの現在と未来』、『テロとの戦いの時代のマスメディア』、『マスメディアと汚職』、などの会議が開かれ、2003年にはビシュケクで『第五回中央アジアマスメディア会議』が行われた。
HIVOSのプロジェクト このオランダの組織は1994年から活動開始。大規模な戦略的プログラムを開始、4つの主要なセクターに力点を置いた。その際、マスメディアの分野での活動は優先的なセクターと位置付けた。その後、原因は不明だが、このプログラムは変更が加えられ、マスメディアセクターの優先性は落とされて、その代わりに小企業と人権擁護セクターにとってかわられた。
国際ジャーナリスト連盟(IFJ)のプロジェクト IFJはキルギスタンで2002年4月から活動開始。この組織の代表がビシュケクに到着し、我が国に独立系ジャーナリストの労働組合を作るパイロットプロジェクトを開始した。このプロジェクトは1999年にIFJの協同会員に採用された地元の公共団体『ジャーナリスト』とのパートナーシップのもと行われた。そのような共同作業の結果、公式に2003年キルギスジャーナリスト労働組合が発足し、この国のみならずこのような団体としては中央アジア全体で初めてのものとなった。
国際メディアサポート(IMS)のプロジェクト このコペンハーゲンのヨーロッパ系組織は中央アジアで2002年の秋から活動を開始した。それは地方のマスメディアの分野での状況の前調査を行い、2003年5月にはビシュケクで中央アジアの編集者と出版人の代表者間会議を行い、そこにはカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスの四か国が参加した。 ヨーロッパのドナーの側から地元のマスメディアに協力をするための作業戦略の共通のプラットフォームが作り上げられた。


キルギス共和国公共テレビ・ラジオ協会(KTRK)


チャンネル名 KTRK
住所 キルギス共和国ビシュケク市 郵便番号 720010 マラドイ グワルディイ 並木通り
電話 +996 312 655 662
ファクス +996 312 392 404
ステータス 公共
放送基準 PAL
サービスへのアクセス テレビ:5チャンネル
ラジオ:5ラジオチャンネル
インターネット放送:www.ktrk.kg(オンライン‐レジーム)

関係の法律にのっとりKTRTの運営機関には次のものが含まれる。

‐最高運営機関としてのオブザーバー理事会
‐執行機関としての会長

オブザーバー理事会は社会全体の関心を代表しており、公共放送の原則の順守の主たる保証人である。オブザーバー理事会の構成の原則は明確に決められており、オブザーバー理事会は議会、大統領、市民社会から同数ずつ合計15名の成員で構成される 。オブザーバー委員会の成員はすべて、紹介者が誰であろうとも、教育、科学機関、公共のもしくはその他の非営利組織から推薦されたものでなくてはならない。
オブザーバー理事会の主要な機能の一つとして、会長の任命および罷免がある。会長は執行機関であり、KTRKのチャンネルを良好に維持することに対して責任を負う。
会長は、4年に一度理事会によって選出され、理事会に対して報告義務がある。
会長は理事会に上申して副会長を任命したり罷免したりできる。会長は協会の活動を指導し、管轄下の部課を全体的に管理し、協会に課された課題の執行に対して責任を負う。


放送分野
多民族国家キルギスで最も広く使われているのがキルギス語、ロシア語、ウズベク語であり、新聞雑誌の主要なものはこれらの言語で出版されている。しかし、伝統的にキルギスのジャーナリズムは二か国語で機能している‐キルギス語とロシア語である。ソビエト時代はロシア語が優位を占めていたが、独立国家となってからは特に急速にキルギス語のマスメディアが発達し始めた。 
KTRKを具体例にとると、放送部門は下記のようになっている:
‐放送領域:キルギス共和国の居住地の98%
‐放送ネット:地上波(アナログおよびデジタル)、衛星、ケーブルおよびインターネット放送
‐放送用語:キルギス語/ロシア語(キルギスの法律によりテレビ・ラジオ放送の総量の50%以上は母国語で行われなくてはならない)。

全体量の50%以上を国語で放送することが課題。
キルギス共和国法『キルギス共和国テレビ・ラジオ公共放送協会』法に基づいて、協会はその放送の50%以上を国語で行うことが義務付けられている。
2014年の国語(キルギス語)での放送は、全総量の(KTRKのテレビおよびラジオチャンネルの)72%であった。

放送の30%未満を子供向、若者向け、娯楽および教育番組にすること。
KTRKでは『子供向け-教育番組』は『ケレチェク』スタジオと、『バルダル fm』スタジオで制作されている。前者が優先的に、社会保障政策の一環のデジタル化事業の中に入った子供向け‐教育チャンネル『バラスタン』用に番組を作っており、後者は協会のラジオ番組を聴取している子供たち向けの番組を制作している。
若者向けの娯楽ジャンルではテレビの『音楽』チャンネルや、ラジオ局『ミツ・クィヤル FM』の番組を放送し、同様にKTRKのチャンネルで『若者むけ番組』スタジオの番組を放送している。
子どもと若者向けならびに娯楽と教育番組の総量は、‐協会の7つのテレビ・ラジオチャンネルの平均計算で、自社の番組の全体の36%である。

自国製のコンテンツは70%以上、外国のものは30%未満。
協会のテレビ・ラジオチャンネルの放送の外国製コンテンツはアニメーションや映画‐音楽番組で、その量は放送の全体量の20%未満である。残りは自国製の番組で、自国制作の映画、キルギス国内のスタジオで制作された番組である。それに応じて、2014年にはこの法律は完全な形で実施された。

国家機関からの公式な通知の伝播。
キルギス共和国『キルギス共和国公共テレビ・ラジオ放送協会』法に応じて、КТРКは国家機関からやキルギス共和国の地方自治体からの公式な通知を伝播し、その活動を報道している。


KTRKの歴史


KTRKの歴史は1931年に始まった。キルギスラジオの公式な開設日は1931年1月20日。まさしくその日にフルンゼ市で、300の有線放送受信設備へつながる加入者用通信幹線ネットがついた25㎞にわたる有線放送中継施設が稼働し始めた。1930年フルンゼで企画有線放送受信設備の建設が始まり、1931年完全操業に入った。

KTRKチャンネルで人気のあるテレビプログラム:
‐ニュース(キルギス語およびロシア語);
‐『アプタ アヤグゥイ』(『今週のまとめ』)その週のまとめの放送;
‐トークショウ『オイ オルド』;
‐『マナス ターヌー』;
‐『成功の公式』;
‐『KTRKケルベニ』
‐『ディル バヤン』
国際音楽およびスポーツプログラム/プロジェクト
‐ 連続テレビドラマ


テーマとジャンルの多様性の拡大
2014年の公共1チャンネルの放送ネットの中で、最も目立った出来事と人気の高かったテレビ番組のリスト
‐第22回ソチ冬季オリンピック中継‐2014年2-3月。KTRKはキルギスでオリンピックを放映する特別ライセンスを得た。
トルコ連続ドラマ『素晴らしい世紀』シーズン3。本会計年度に、公共1チャンネルでキルギス語に吹き替えられたトルコ製人気連続ドラマ、『素晴らしい世紀』の続編が始まった。
‐イッスイク‐クリ、チョルポン‐アマ市における国際試合『世界遊牧民競技会』の主催と放送。2014年9月。
‐韓国インチョン市におけるアジア大会の中継。2014年9-10月。
オシ市のKTRKの南部のスタジオから毎日長距離衛星中継。2014年8月にオシ市にスタジオがオープンしたことに伴い、毎日のニュースブロックの中で、オシ市から直接中継をして南部地方のニュースや出来事を報道している。


他国から購入したテレビプログラム
番組の規則。キルギス共和国の法律に従って、外国のテレビ放送はKTRKテレビチャンネルの放送時間全体の30%以下の割合で放送することができる。外国製の番組を放送する時間の配分の規定や条件はKTRKが独自に定めるものとする。
KTRKに入ってくる音声・映像作品は、KTRKチャンネルのコンテンツの芸術的、技術的な内容面を検査する目的で創設されたKTRKの芸術委員会の検査を受ける。協会の芸術委員会が、ある外国制作者による作品を、キルギス共和国内の民族間の関係に悪影響を与えうると考えたことから、KTRKでは彼の作品を放映しないということが起きた。加えて指摘されたのは提供されている作品はあまりにも多くの暴力シーンがあり、公共テレビチャンネルで放送するには受け入れられないということだった。
KTRKがその資本金の60%を持つ創立者となっている合弁企業有限責任会社『第一チャンネル。キルギスタン』についての情報。有限責任会社『第一チャンネル。キルギスタン』は合弁企業で、KTRKは資本金の60%の出資権をもつ協会の創立者となっている。非公開株式会社『第一チャンネル。世界ネット』では、ロシア側の参加分は資本金の40%となっている。
1996年3月28日キルギス共和国政府とロシア連邦政府との間で、ロシアのテレビ・ラジオ放送局の番組をキルギス共和国内で放送するにあたっての規定と条件について、契約が締結された。
あらゆる外国の番組は、署名された覚書ならびに契約書に則って購入され、キルギス共和国の法律によって規制される。

KTRKの海外のパートナー
– BBC (British Broadcasting Corporation) 毎日放送する2つのテレビ番組とラジオニュースを放送。
– ラジオ”アザットィク”(「ラジオ・リバティ/ラジオ・フリー・ヨーロッパ」キルギス語放送)
– 毎日2つのテレビ番組とラジオニュース。
– イランイスラム共和国の声(Sāzmāne Sedā va Simaye Jomhūrīye Eslāmīye Īrān)イラン国営テレビ・ラジオ局
– CNR(中国人民ラジオ) 毎日放送するラジオの音楽番組;
– アフガニスタンラジオとテレビ(覚書が討議中)。
– 国連ユニセフ(UNICEF UN) コンテンツ交流に関する協力関係
– USA 平和部隊(Peace Corps USA) 部隊の緊急通報の中継
– PROON(UNDP)KTRKでコンテンツを放送
– インターニュースネットワークのキルギス支局(Internews Network in Kyrgyzstan)。発展のサポートと国内の資源について援助;
– EBU(European Broadcasting Union) KTRKチャンネル向けのコンテンツの提供;
– MNB(Mongol National Television)芸術映画の放映;
– CCTV-ロシア語(中国中央電視台国際チャンネル)ニュース番組;
– アリランTV(韓国国際テレビ・ラジオ放送サービス)覚書を作成中;
– TRTアバズ(Türkiye Radyo Televizyon Kurum、トルコテレビ・ラジオ局)研修。


マスメディアの資金源


多くのテレビ放送業者の資金源として、国の補助金およびコマーシャルタイムの販売がある。しかしチャンネルの中にはスポンサーやドナー、ボランティアの寄付などから資金を受けているものもある。テレビのコンテンツ販売や、SMSサービスから追加の資金を得ているものもある。しかし大半のテレビ局は相変わらず広告収入(69%)と国の補助金(19%)が主たる収入になっている。

・共和国予算から協会へ供与される資金ついて
2014年共和国予算から4億20万ソムの資金がKTRKに供与された。社会的分野における国家予算付与対象機関として、協会の活動を国として支持している。
キルギス共和国『予算』法に則って、国家予算から協会への資金供与は、国民にテレビ・ラジオ放送や映画制作を提供するための経常支出に向けられる。
国による資金は第一に次の支出をカバーするために供与される:
– 中継サービス
– 技術サービス
– 制作スタッフの給与
– 社会保障基金への支払い
– 出張費
– KTFのコンテンツ提供に関するサービス

KTRKの会計年度における国庫からの資金の規模は、2014年度予算では53%を占めている:
国家予算‐4億20万ソム
協会独自の収入‐(広告、放送枠の販売、技術機器類の貸し出し)
‐ KTRK‐4,590万ソム;
‐ RRTZ ‐1,690万ソム;
‐ KTF ‐50万ソム。
となっている。
総計:協会全予算 ‐6億1,510万 ソム(2015年度)

2014年のKTRKの支出 1,000ソム単位
テレビ・ラジオ番組の放送サービス  174,307
その他の支出  737
レンタル支出  1,139
OSのメンテナンスと修理  3,286
出張費  6,318
OSの減価償却  24,498
その他税金  3,930
主要機器の購入  45,303
予備品購入  24,940
共益費と通信費  15,938
警備サービス  6,116
その他のサービスの購入  29,289
社会的基金への寄付  30,707
給与  187,307


2013年から2015年の間の発展戦略の実現に関する協会の活動について
KTRKの発展戦略には22の計画課題に関する69の活動(副課題)が含まれている。2013年‐2014年の中間報告作成時までに35件の副課題が完了し、8件が完成段階にある。
戦略プランの課題の完了状況は2015年3月1日の段階で63%である。

その他の副課題:
副課題件数 全体量に占める割合
a) 完成段階 8 12%
b) 作業中もしくは一部遂行済み(半分完了) 10 14%
c) 実現の期限が来ていない 2 3%
d) 遂行されなかった、延期された、中止もしくは変更された課題 14 20%

技術的な近代化とデジタル放送移行準備に関する課題。その達成度。
キルギス共和国のデジタルテレビ・ラジオ放送への移行は、国の通信面での安全保障や、質の高い放送を通じて国民の情報へのアクセスの要求を満たすこと直結する。デジタル放送はテレビ放送のみならず、通信のすべての分野をカバーする。テレビは、重要な情報の情報源であり、かねてから国内の情報、文化形成の主要な手段であると考えられてきた。視聴者がインタラクティブなマスメディアおよびインターネットの方へ少しずつ、しかし明らかに移行していくことが世界的な潮流になっているが、キルギスではインターネットインフラがあまり発達していないことから、ここしばらくはテレビ・ラジオ放送が高い必要性を持ち続けるであろう。デジタル・ラジオ放送への移行は技術的問題であるのみならず、高度に社会的、文化的、経済政治的な問題である。
2013年から2017年の間の安定的発展戦略において、デジタル放送への移行プロジェクトは優先的国家プロジェクトの一つとして位置づけられている。キルギス共和国政府には、2017年までに国民にデジタル放送を国内どこでも受信できるようにするという重要な課題が課されている。デジタルテレビ・ラジオ放送システムの導入は、テレビ放送ネットを近代的で安定して機能し、市場経済の条件下で自力で発展する潜在力を持ったものへと改革することであり、情報資源で国民をより満足させる必要性とつながっている。
世界中どこでも、国家機関によって解決できる『デジタル化』関連の第一の、かつ最重要の課題は、最低限では情報受信の既存のバランスを保つことであり、最大限では地方と中央、大都市と遠隔村落の間での情報の不平等(『デジタル格差』)をなくすことである。『デジタル化』は、国が署名したデジタル放送分野における国際義務‐デジタル放送プラン(プラン『ジュネーブ06』)によっても義務づけられている。
新型テレビを持っていなかったり、デジタルテレビ放送の受信機を入手することができない貧困家庭には、国が無料で提供する。

2014年1月から3月にかけてNHKのエンジニアたちとSONY社の専門家たちによる共同作業の結果、JICAから2006年に技術的な助成として受領した機材の部品と周辺機器と交換に、制作現場に3つのビデオ編集機器と25台のビデオデッキが導入された。サポートの費用は1,097万6,000ソム。

KTRKの将来の計画。
デジタル放送への移行の現状と計画‐キルギス共和国内の大部分では、アナログ放送とデジタル放送を並行して行っている。同様にスタジオおよび移動中継設備のHD/SDフォーマットへの近代化、海外市場での国際的な活動を中継する計画は今のところない。


日本との関係


KTRKと日本のテレビ局と具体的な関係はないが、日本の組織との連絡および協力関係には次のものがある:
‐在キルギス共和国日本大使館
‐JICA 日本国際協力事業団
‐JAMCO一般財団法人放送番組国際交流センター
‐KRJC 在キルギス共和国人間開発日本センター
日本の国家および政治的なしくみから、KTRKは日本のテレビチャンネルと直接のコンタクトを作り出すに至っていない。そしてこれは同様の協力が政府レベルでのみ実現されていることからも説明がつく。しかしそれにもかかわらず日本との協力には豊かな歴史がある。以下に初期のころから今日に至るまでのKTRKと日本の技術および文化協力を時系列に示す。
キルギス共和国の公共テレビ・ラジオ放送協会は、日本の国民と政府に対し、長年にわたる多大な援助とご支持について、深甚なる感謝を表する。同様に引き続きの実りの多い協力関係と、特に日本のテレビ局と新しい関係ができることを切望する次第である。


日本との協力

期間 技術協力
1 1993-1995年 キルギステレビ・ラジオ局のテレビの技術の調査が開始(JICA)
2 1995年 キルギステレビ・ラジオに新しい技術を導入するために2100万USドルを投入するという最終計画書が作成された(JICA)
3 2005-2006年 KTRKは700万USドル相当の技術的支援を受ける(JICAを通じて日本政府より)
4 2012年 公共テレビ・ラジオ放送協会において、2006年に受けた技術的支援についての調査が実施された(JICAを通じてNHK)
5 2013-2014年 2012年の契約に基づいて、継続協力プランによって2006年に受領した技術的助成のサポートのために、部品と周辺機器80万USドル相当が購入された(JICA)
6 2014年 日本政府からKTRKに対する助成として受領した機器の状態を知るために公共放送協会を 東京の本社の東・中央アジア地域担当理事を団長とする代表団が訪問。
7 2014年 日本政府から受けたKTRK向けの助成を総合的にチェックするために15名から成る委員会が訪れた(日本外務省、在キルギス日本大使館、JICA)。
8 現在 当プロジェクトは成功裏に完全履行された。
期間 文化協力
1 2012年 芸術映画『ユズリハ』のテレビ放映に関する契約成立(JICA、国際交流基金。付記:視聴者の希望でこの映画は再放映された)。
2 2013年 在キルギス共和国日本大使館の要請でKTRKのチャンネルでドキュメンタリー映画『流鏑馬』が放映された。KTRKの翻訳・吹き替えスタジオで翻訳と吹き替えが行われた。
3 2013-2014年 在キルギス共和国日本大使館のKTRKチャンネルへの協力で、日本外務省制作の日本に関する一連の情報番組を放映した。このビデオ映像はKTRKの翻訳および吹き替えスタジオで翻訳、吹き替えが行われた。
4 2013-2014年 KTRKの国際関係部で在キルギス共和国日本大使(現在および元)が出演した特別番組が企画された。番組の名称は『キルギスと日本の協力の未来』で、再放送もされた。
5 2014年 JAMCOとコンテンツ購入の契約が締結された。その後JAMCOに提供されたアニメーションがビシュケク人文科学大学東洋学部で日本語からロシア語とキルギス語に翻訳された。
期間 実績
1 2011年 JICAの『ドキュメント番組制作』プロジェクトでKTRKの職員1名が日本で研修を受けた。
2 2012年 JICAのマスメディア向け文化プログラムでKTRKの職員1名が日本で研修を受けた。
期間 コンサルテーション
2011-2015年 KTRKではJICA を通じて理事長の相談役として主席ボランティアが6か月の任期で毎年勤務した。
追加事項 行事
毎年KTRKでは必ず様々なスポーツ‐文化的なイベントを報道することを善き伝統としている。 ‐日本文化週間(在キルギス日本大使館)
‐日本映画祭(在キルギス日本大使館)
‐ウォーキングマラソン(JICAのボランティア主催)
‐日本のオペラ、相撲、居合道、剣道(在キルギス日本大使館)
日本との関係 KTRK国際関係部に日本とのコレポンを担当する職員が一名いる。当該専門員は日本ができ、JICAの研修で日本に行ったことがあり、日本の有名な大メディア組織を訪問していて、ある程度日本のメディア市場について知識を持っている。

以上に示す通り、KTRKとJICAの間の契約により、5年続けて、協会に少数の日本の専門家が滞在した。彼らの滞在期間は数日から半年まで様々だった。彼らのおかげで職員は、公共放送の重要な使命をよく理解することができた。メンタリティーや文化の違いにもかかわらず、日本人には多く学ぶところがある。職員にとっては、どのように仕事に取り組むか、又視聴者は、どういう番組を見るべきかなどだ。KTRKチャンネルは日本のメディアが制作したニュース、連続テレビドラマ、アニメ、音楽ビデオを放映する用意がある。


結論


行った研究の過程で得られたデータから、次の結論を導き出すことができる:
  • キルギスには約30の電波放送オペレーターが存在し、4つの衛星放送、2つのケーブル放送、そして7つのIPTVオペレーターがある。
  • 国営テレビチャンネルKTRKとELTRで地理的に最大域をカバーしている(98%)。
  • キルギスで最も多く視聴されているチャンネルは:KTRK、ORT、ELTRである。
  • 地方のテレビチャンネルのうち最も広い地域をカバーしているのは、国営のテレビチャンネルで、地方の民放チャンネルはすべての地方はカバーしていない。
  • 聴衆の大半はアナログテレビ放送を見ることができている。
  • テレビ放送で好まれる言語は:ロシア語とキルギス語
  • 民間チャンネルはプロダクションスタジオの作品を使う度合いがより低い。
  • アンケートをとったテレビチャンネルの間では、設備と人材を必要としている。
  • 広告は大半のテレビチャンネル(25のうちの18)で主たる収入源となっている。
  • リサーチした6つのチャンネルで、放映時間の最も多くの割合を娯楽番組が占めている。
  • 社会的な意義のあるテーマ、すなわち文化、教育、保健、エコロジーなどの番組の割合は、チャンネルによって3.7%~12.6%の幅がある。
  • プロダクションスタジオ制作の番組市場は、ゆっくりと成長している。
  • プロダクションスタジオ制作の番組の70~80%は地元の発注者向けのもの。
  • 外国の顧客向けには、地元の制作会社は主にコマーシャルを制作している。
  • デジタル方式へ移行することの最大のメリットは、キルギスにおける国民的なテレビの発展である。
全体としてアンケートをとった大半の会社はデジタル放送への移行を支持しており、リスクや困難もありうるとは言いながら、ここに成長の可能性を見出している。


出典:
  1. www.president.kg/ru
  2. www.e-ices.org
  3. www.minjust.gov.kg
  4. www.mes.kg
  5. www.monitoring.kg
  6. www.soros.kg
  7. G.イブラエフ、S.クリコフ『キルギスタンにおけるマスメディアの発展の歴史と現状』
  8. K.マンベタリエフ,『恐怖からの自由』、論文選集、2006年 ビシュケク、143p.
  9. エリック・ジョンソン、マルタ・オルコット、ロバート・ホルビッツ, 『中央アジア諸国におけるマスメディア カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン』USAID向け、インターニュースによる分析
  10. K.マンベタリエフ、Z.ブグバエワ, 『キルギスタンの国家権力と非国営報道機関』
  11. K.マンベタリエフ『21世紀のキルギスタンのマスメディア』、OSCE選集『中央アジア‐将来を守るために。 多文化、多言語社会におけるマスメディア』。2003年、ウイーン
  12. A.イサエワ『キルギスタンのマスメディアの発達と機能』、旧ソ連圏社会‐政治的プロセス研究情報分析センターのサイト(http://www.iacentr.ru/public_details.php?id=64) [42]
  13. 『キルギスマスメディア関連法の適用実例』、2003年から2006年期のマスメディアおよびジャーナリストが関わった裁判のキルギス共和国の裁判所判決集
  14. 新聞『MSN』紙 、2007年7月17日付。KTRKは州ごとに自社の下部組織‐地方テレビ・ラジオ局を所有している。
  15. MGTRK『世界』は独立国家共同体(CIS)諸国の国際テレビチャンネルのキルギスタン支部である。
  16. M.ハミドフ『キルギスタンにおける活字媒体』、タシケント会議『中央アジアのマスメディア:今日と明日』、タシケント市、2000年
  17. アリシェル・オリム『アメリカ合衆国とロシア キルギスタンにおけるメディア戦争』中央アジア、2007年11月6日
  18. K.マンベタリエフ『キルギスタンのマスメディア支援の西側諸国によるプロジェクト』、『中央アジアにおける言論の自由』、アムステルダム、2003年12月12日
  19. 2014年KTRK年次報告書

※リンク先は掲載時のものです。現在は存在しないか変更されている可能性があります。

A. アサンベコワ

キルギス共和国公共テレビ・ラジオ放送協会(КТРК) 国際関係部

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