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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第25回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2016年12月~2017年6月

主要国のテレビ国際展開の現状と課題

韓国テレビの国際展開

金泳徳
メディア研究家

1990年代までテレビ番組は韓国民を視聴者とする国内向けのものとしか考えられていなかった。しかし、韓国の作り手は2000年以後アジアでの熱い韓国ドラマブームを経験して以来、常にグローバルを意識し番組づくりを行う時代を迎えている。

海外での韓流の広がりに大きく関わっているのは番組販売と衛星によるテレビ国際放送である。マーケットでの取引によって番組が輸出され外国の放送局によって放送される場合もあれば、KBSワールドやアリランTVなどチャンネルレベルで衛星を通して外国の視聴者に届けられる場合もある。最近ではNetflixのようにネットさえつながれば国内にいながら簡単に外国の映像コンテンツを取り込むことができる。

本稿では韓国の放送コンテンツが前述の番組販売と衛星によるテレビ国際放送の両方において国際展開される現状を説明したい。


1. 放送コンテンツ等の輸出現状

最近になって韓流を引っ張ってきた放送番組輸出の勢いが弱まって来ている。放送と通信を所管する政府機関である韓国放送通信委員会が2016年12月26日に公開した「2016放送産業実態調査報告書」によると、2015年度の放送コンテンツの輸出額iは、3億199万ドルとなり、前年より3.8%減少した。輸出額は2011年以来ずっと増加を続けてきたが、2014年を頂点にして2015年には減少に転じた。


韓国の放送コンテンツ輸出額の移り変わり

単位:万ドル

出所:韓国放送通信委員会

 

前年比で減少した理由としては3大市場の日本と中国・香港圏の番組販売が振るわなかったことが一番大きい。最大市場の日本の場合は2012年以後の日韓関係の悪化および嫌韓ムードが続き、それが韓国放送コンテンツへのニーズを萎縮させた結果と見られる。また、中国や香港の場合は2014年末から中国で空前のヒットとなったドラマ「星から来たあなた」以後、韓国の放送番組を中国で提供する場合、ネットでも中国当局が事前審議制を取り始めたことが中国側の購買力の低下につながったと見られる。

輸出される放送コンテンツの中で番組販売額をベースに見ると、一番多く輸出されている番組はドラマである。2015年の番組輸出額iiの中でドラマが占める割合は79.6%(1億7201万ドル)で際立って高い。その次はバラエティー(14.4%)、アニメ(8.8%)、教養(4.0%)とドキュメンタリー(4.0%)の順となっている。

地上波放送iiiが海外に輸出した番組のジャンルを見ても、ドラマが一番多く、次は、差はあるもののバラエティーとなっている。地上波放送全体の輸出額の中でドラマのシェアは85.9%で、バラエティーは13.4%となっている。一方、番組プロバイダーの放送チャンネル使用事業者ivの場合は、地上波放送と同様ドラマが一番多く、全体の6割(3088万ドル)を占め、次いでバラエティー(17.7%)、そして3番目はスポーツ(10.1%)、4番目は教養(7.3%)と続いている。


ジャンル別輸出状況

単位:万ドル

出所:韓国放送通信委員会

 

事業者別に輸出状況を比較すると、地上波放送の不振ぶりが目立っている。地上波放送の番組輸出額は2億4573万ドルとなり、2014年に比べて8.3%(2212万ドル)も減少した。ドラマと教養番組の輸出が落ち込んだことが主な原因と見られる。

一方、アニメーション、スポーツなどを目玉にしている放送チャンネル使用事業者による輸出総額は前年に比べ22.4%も増加し5627万ドルを達成した。地上波放送事業者による番組販売の輸出額は放送チャンネル使用事業者より依然として4倍以上多いが、地上波放送の停滞が続く中、その差は縮まってきている。

地域別に輸出額をみると、2015年に韓国の放送番組を最も多く輸入した国は日本で全体の輸出額の32.9%(7098万ドル)を占めている。日本に続いて、中国(24.3%)、台湾(10.1%)、アメリカ(6.8%)、香港(5.1%)の順となっている。番組販売による輸出総額の中で日本、中国、台湾、香港等東アジアが占める割合は72.4%に上り、番組版権マーケットの形成は類似した文化的な背景がとても重要であることが伺える。


国・地域別の番組販売による輸出額

2015年 2014年
国・地域 輸出額 国・地域 輸出額
1 日本 7098 日本 7902
2 中国 5258 中国 5693
3 台湾 2182 香港 5270
4 アメリカ 1461 台湾 1564
5 香港 1109 タイ 1469
6 タイ 964 アメリカ 1055
7 ベトナム 912 ベトナム 905
8 ミャンマー 521 シンガポール 388
9 フィリピン 438 フィリピン 346
10 シンガポール 236 カンボジア 191

単位:万ドル

出所:韓国放送通信委員会

 

地上波放送、放送チャンネル使用事業者両方ともアジア向けの番組輸出が圧倒的に多い。地上波放送の番組輸出は、日本(5793万ドル、35.3%)と中国(4266万ドル、26.0%)の占める割合が6割を超えており日本と中国以外も台湾、タイ、ベトナム、香港などを入れると、アジア地域のシェアは95.5%まで上がる。アジア地域以外での番組輸出は4.5%に過ぎずほとんど行われてないことがわかる。


2.衛星による国際展開

韓国で衛星によるTV映像の国際展開に関心が高まったのは1990年代からである。韓国政府は1996年に韓国に対する国際社会の正しい理解と国際友好・親善の増進などを目的に、国営放送の「アリランTV」を設立した。それ以来、民間レベルにおいても「KBSワールド」、「tvNアジア」、「YTNワールド」なども加わり国際放送を行っている。

① アリランTV
国際放送を行って20年目を迎えるアリランTVは現在8つの海外衛星を使ってほぼ全世界をカバーし外国人向けに毎日韓国関連の情報、伝統や現代文化、国際親善に関わる番組を流している。アリランTVが見られる視聴世帯は、ヨーロッパ4162万、アメリカ3285万、中東およびアフリカ1443万、中南米976万、アジア2504万と総計1億2369万に及んでいるv。使用する言語は、英語はもちろん中国語、スペイン語、アラビア語、ロシア語、ベトナム語、インドネシア語などである。

② KBSワールド
KBSワールドは韓国を代表する公共放送局のKBSが2003年に設立した国際放送である。KBSで放送された番組に外国語の字幕などをつけて放送している。英語に加えて、最近は中国語、日本語、スペイン語、インドネシア語、ベトナム語の字幕サービスを提供している。KBSワールドは設立当初には海外同胞向けの放送を標榜したが、韓流ブームの影響を受けてKBSの放送したドラマ、音楽、バラエティー、ニュースなどの番組を多く編成している。KBSワールドは現在100カ国で5400万視聴世帯向けに毎日放送されているし、46カ国の1700のホテルでも見ることができるvi

③ tvNアジア
商業チャンネルの国際展開として目立っているのがCJE&Mの「tvNアジア」である。「tvNアジア」は2009年から香港を本拠地にシンガポール、マレーシア、インドネシア、台湾、フィリピンなど東南アジア10の国と地域の40に及ぶプラットフォームviiでサービスを展開している。国内向けのtvNを中心にCJE&Mが傘下に持つチャンネルから番組の提供を受けて韓国のフード、ビューティ、ドラマ、映画、音楽など幅広く放送している。

④ その他
地上波TVとしてアメリカに子会社を設けて北米や中南米向けに住む海外同胞を対象に放送しているチャンネルもある。MBCの場合はアメリカのLAをベースに1991年にMBCアメリカを設立しMBC自社製作の番組を放送している。また、SBSも1992年からアメリカに子会社を設けて放送を行い、さらに2004年からはDirecTVを通じて24時間SBSチャンネル、2006年からはSBSプラスをサービスしている。


3.結びに

2015年の輸出額が前年より減ったことはいわゆる韓流の持続と拡散に影響を及ぼすだろう。衛星による国際放送の展開にもその影響が心配される。とくに韓流を牽引してきた2大市場の日本と中国で前年に比べ減少を見せたのは大きな痛手になりかねない。韓流全体を支えてきたのは日本と中国であるだけに、両国での不振が続けば韓流コンテンツの国際展開の根幹を揺るがすかもしれない。さらに不振の理由が、日本では嫌韓ムード、中国では高くなった規制の壁など、外部要因であるがゆえにその深刻さは増してくる。韓国側ができることには限界があり、なかなか打つ手が見いだせない中、成長のための新たな戦略を打ち出し、先行きの不透明さを払拭できるのか、韓流の今後が問われている。

註釈

i. 放送コンテンツ輸出額の中身は番組販売、ビデオ&DVD販売、タイムブロック等から得られた金額をいう。

ii. 番組販売、ビデオ&DVD販売、タイムブロック等を総括した放送コンテンツの輸出額は3億199万ドルであるが、その中で放送番組販売による輸出額は2億1603万ドルで、それを元にジャンル別の割合を計算した。

iii. KBS、MBC、SBS等の地上波放送事業者はそれぞれ子会社を持っており、そこを通して放送コンテンツを輸出している。

iv. 料理番組を放送するfoodtvやエンタメ情報の専門チャンネルmnetなど、ケーブルテレビプラットフォーム事業者にチャンネルを提供する番組プロバイダーのこと

v. 出所:http://www.arirang.com/prroom/about_arirangn5.asp?sys_lang=Eng
アリランTVは、ヨーロッパではフランス最大の衛星放送のCanalsat, イタリアのSky Italia, スペインのDigital+、アメリカではDirecTV、アジアではシンガポールのStarhub、インドネシアのIndovision等で見られる。

vi. 出所:http://kbsworld.kbs.co.kr/about/about_kbsworld.php

vii. tvNアジアは東南アジア10カ国で約780万の視聴世帯を持つ。

※リンク先は掲載時のものです。現在は存在しないか変更されている可能性があります。

金泳徳

メディア研究家

著者経歴

2000年 上智大学大学院新聞学専攻博士後期課程満期退学
2000年~2009年4月  韓国放送映像産業振興院 研究員
2010年~2014年7月 韓国コンテンツ振興院 日本事務所所長
2017年1月 韓国コンテンツ振興院 海外事業振興チーム チーム長

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