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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第17回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2008年2月1日~2月29日

非英語国のテレビ国際放送

[報告(2)] アリラングローバルTV、韓国を世界につなぐ

金 泰元
韓国アリラン・テレビ 革新・政策企画室 次長

1.設立の背景

1990年代、国際社会がイデオロギーの対立から脱却し、市場経済の原理を軸とした競争の時代に突入するにつれ、デザイン、ブランド、イメージなどの記号的要素の国際的な交流が重要性を増してきました。こうした状況下、韓国政府は韓国を世界に積極的に「売り込む」ためのさまざまな方策に着手しました。なかでも、マスメディアを通じて国のイメージを向上させる手段として注目されたのがテレビ放送です。韓国内で韓国人をターゲットした番組を放映しているだけでは、韓国に関する最新のニュースを知りたいと思っている韓国在住の外国人や海外在住の韓国人に十分な情報を伝えたことになりません。実際、韓国に関する外国メディアの報道は、政治や社会の重大事件あるいは犯罪などに偏っており、韓国のイメージの向上につながるようなものではありませんでした。

韓国の経済が貿易に依存して急速に成長しているという状況に加え、北朝鮮との外交上の対決いう事情に関連して外交や国際問題についての情報を韓国から世界に向けて発信する必要性が高まる中、韓国の国政広報処(Government Information Agency)は国際衛星放送局の開設計画を大統領に提言して、1995年1月に計画実施に向けた第一歩を開始し、海外広報院(Overseas Information Service)と国政広報サービス(Government Information Service)による調査やいろいろな分野の専門家からの意見の聴取が行われました。こうした準備活動の結果、「高度な放送に向けた五カ年計画」が作成され、コリアチャンネル(海外向け衛星放送チャンネル)の創設ならびに運営のための青写真が発表されました。さらにこれをふまえて、コリアチャンネルの創設に向けた実際の作業が始まりました。

韓国と韓国人の真の姿を世界に知ってもらうことを目的として、KOBACO1、KBS、MBC、SBS、KITA2、KCCI3は公的機関としての韓国国際放送交流財団(Korea International Broadcasting Foundation:KIBF)を立ち上げました。KIBFの戦略の第一段階は韓国内で外国語の放送局(ケーブルテレビ)を運営することであり、第二段階は国際衛星ネットワークを構築して海外向けの外国語チャンネルを運営することです。第三段階は、韓国のテレビ番組の(特にアジアにおける)国際競争力を高めるためのさまざまな支援事業を推進し、 グローバルなレベルで各種の補助ビジネスを展開することです。

KIBFのこうした努力は、1992年2月に英語のケーブルテレビ番組として結実しました。この番組は韓国在住の外国人や韓国を訪れた外国人をターゲットとし、衛星放送局開設というマスタープランの第一歩となるものでした。新しい放送局の名称をどうするかでちょっとした論争があったものの、「アリラン」で誰もが一致しました。アリランは韓国の国民のアイデンティティを示す言葉であり、韓国の多くの民謡にも登場します。海外でもよく知られており、まさに韓国を示す言葉といえます。アリランは昔の韓国のあこがれと希望から派生した言葉であり、ユートピアに至るために克服しなければならない峠やその他の障害物を示唆しています。

1998年10月、文化観光部(Ministry of Culture and Tourism)は韓国の海外向け公共放送局の名称をアリランとすることに決定しました。これに続き1年間、アジア太平洋地域の大部分をカバーするアリランTVの衛星放送に向けた準備が進行しました。衛星放送の開始から1年後には、アリランの衛星放送がカバーする範囲は米大陸、欧州、北アフリカへと広がりました。さらに、(スカイライフによる)衛星ケーブル放送の開始によって韓国内でもアリランを視聴できるようになりました。アリランは韓国南部の済州島でFMラジオ局も開設しました。この結果、アリランは海外向けテレビ、国内向けテレビ、ラジオを含むマルチメディアのプロバイダとなったのです。2004年8月にはアリランの海外向け放送はアフリカ大陸全域もカバーしました。

しかし、単一の世界共通語(英語)による既存のグローバルなネットワークを利用した放送には限界があります。そこでアリランは、世界の各地域からのアクセスを増やすための最初のステップとして、2004年8月にアラブの22カ国を対象に1日6時間のアラビア語による放送(残りの18時間は英語の放送)を開始しました。

2.使命

韓国国際放送交流財団(Korea International Broadcast Foundation:KIBF)の使命は、KIBFの規約の第二条に明確に定められているように、「韓国を正しく理解してもらい、国際社会のメンバー間の友好的な関係を促進するともに、放送番組の質的な向上に努め、放送・視覚メディア・広告産業ならびに文化や芸術の発展に寄与する」ことです。

こうしたビジョンの実現に向け、KIBFは2つの活動の柱を打ち立てました。1つは「国際社会における韓国のイメージと理解を向上させるための」海外向けの衛星放送であり、もう1つは「韓国在住の外国人の韓国理解を促進し、韓国人のグローバルな思考を発展させるための」放送活動です。

言うまでもなく、アリランテレビに定められている使命からすれば、前者、つまり国際社会における韓国のイメージの向上と韓国に関する理解の促進のほうに比重がかかります。アリランテレビのビジョンを現実のものとし、アジアで最良のグローバルな放送局として韓国を世界に伝えることこそ使命といえます。

3. 放送地域と放送技術

アリランTV は現在のところ3チャンネル(Arirang TV Korea、Arirang TV World、Arirang TV Arab)で運営されています。下記の表はアリランがカバーしている地域とチャンネルを示しています(海外向け放送のみ)。

図1.アリランTVの現在の放送地域
図1.アリランTVの現在の放送地域
アリランTVワールドは1999年8月にまずアジア太平洋地域向けの放送を開始し、現在では世界全域に1日24時間放送しています。

Intelsat 10、8、2がアリランTVワールドの信号をピックアップし、アジア、オセアニア、アフリカへ送信しています。北米と南米への送信にはIntelSat 9が使用され、欧州への送信にはHotbird 3/Astraが使用されています。

図2はアリランTVから世界各地への送信経路を示しています。

図2.アリランTVワールドの放送経路
図2.アリランTVワールドの放送経路
アリランTVのグローバル放送網が複雑になるにつれ、直接衛星放送(DTH)ではなくローカルのケーブル・衛星放送局を経由した放送も行われるようになりました。この結果、家庭だけでなく、大手のホテルや飛行機の中でもアリランの放送を楽しめるようになっています。

世界全域でのサービスの確立をふまえ、アリランは各地域に密着したサービスの展開に着手、2004年8月にアリランTVアラブを開設しました。

アリランTVアラブは中東のアラブ22カ国とその隣接国に放送されています。放送はAsiaSat3Sによって再伝送され、ArabSat2Dを通じてリアルタイムで流されています。このため、アラビア語圏の衛星放送加入者をターゲットとすることができます。

図3はアリランTVアラブの放送経路を示しています。

この経路では、まずアリランTVのマスターコントロールルームから送信された信号がKT(韓国の大手通信業者)のテレポートを通じて宇宙にアップリンクされます。信号はAsiaSat3Sにアップリンクされてから、アラブ首長国連邦内のテレポートを通じてダウンリンクされ、ArabSat2Dを介してアラビア語圏22カ国とその周辺国へ送信されます。

図3.アリランTVアラブの放送経路
図3.アリランTVアラブの放送経路
4.ターゲットとする視聴者と言語

アリランTVの初期のターゲットは主として外国のビジネスマンでした。継続的な視聴者は、海外に在住する韓国人あるいは韓国と深い関係がある外国人に限られていました。

  • 主要な視聴者
    – 構成:それぞれの地域のオピニオンリーダー、30代から50代の年齢層、高度な英語能力を持った人
    – 主要なニーズ:
    • あからさまな広告宣伝番組よりも娯楽番組やバラエティーショーを好む
    • 過去の歴史よりも韓国の現在の状況のほうに関心がある
    • 単一のジャンルのチャンネルよりもニュース、経済、娯楽の番組の総合チャンネルのほうを好む

  • 海外在住の韓国人
    – 構成:韓国からの移民、政府や企業から派遣された人、韓国人留学生
    – 主要なニーズ:
    • 韓国からの最新のニュース
    • 韓国の最近のトレンドやポピュラー文化を好む
    (特に最近のドラマ、映画、その他の「ホット」な番組)

    しかし、KBSワールドがいろいろな国で英語番組を開始し、続いて各国語での放送を開始したことから、アリランTVはかつてなく競争的な環境に置かれ、これまでの海外向け放送の基本戦略の変更を迫られることになりました。こうした新しい環境下、アリランTVは2006年12月に実施された海外市場調査に基づいて視聴者のターゲットを修正しました。

  • 地域のオピニオンリーダーならびに韓国と深い関係を持つ外国人
    – 主要な特徴:30代から60代の年齢層で、高度な英語能力を持つ
    – 主要なニーズ:韓国の急速な発展に関するニュースおよび韓国の政治、産業、経済に関する情報

  • 韓流のファン
    主要な特徴:20代から50代の女性、および青少年
    主要なニーズ:ドラマ、映画、最近のトレンド・ファッション・ライフスタイルに関する番組(女性)
    ポップミュージック、ショービジネスに関するニュース、ゲーム、その他のエンターテインメントのコンテンツ(青少年)

番組のほとんどは英語で放送されますが、一定の時間帯の一部の番組については中国語、スペイン語、または韓国語に吹き替えるかあるいは字幕を付けます。アラビア語に関しては、アリランTVワールドを通じて毎日6時間、アラビア語に吹き替えるかまたはアラビア語の字幕付きの番組が放送されます。

5.番組戦略

ACニールセン韓国が梨花女子大学のコミュニケーション研究所と共同で実施した「海外向け放送の効率性と視聴者の動向」に関する調査に基づき、アリランTVは新しい長期計画をまとめました。この新しい長期計画では、ドラマ、ポップミュージック、映画(いわゆる「韓流」番組)に偏っている現在の番組構成から脱却した「韓国に関する総合雑誌チャンネル」という新しい方向が打ち出されています。詳細な内容は次のとおりです。

  • チャンネルのコンセプト:ニュース・情報とエンターテインメントを中心とした(インフォテインメント)総合雑誌スタイルのチャンネル
    – インフォテインメントのチャンネル:これまでのエンターテインメント中心の番組構成から韓国のニュース・時事、韓流コンテンツ、その他の関連情報を重視する番組構成への移行

  • 番組戦略
    – ニュース・時事:他の国の英語チャンネルに呼応
    • ニュース番組の拡充:単一のタイトル(Arirang News)のもとに英語ニュースに集中
    • 総合TVマガジンの創設:韓国に関するより深くしかもポジティブな情報の放送

    – エンターテインメント(韓流):国内の需給を考慮した柔軟なアプローチ
    • ドラマ:地上放送局の輸出商品(現代ドラマ、コメディー)を避け、もっと手軽に入手できる時代ドラマを中心とする
    • 韓流の供給の多様化:ショービジネスのニュース・ポップミュージック・eスポーツ

〈表1〉 海外向け放送の現在の番組構成
〈表1〉 海外向け放送の現在の番組構成路
6.番組の制作

アリランTVで放映される番組は3つのグループに分類できます。最初のグループは自局制作の番組であり、アリランのスタッフが制作の全過程を管理します。次のグループは委託制作された番組であり、アリランから委託された外部のプロダクションが番組を制作します。最後のグループは購入した番組であり、地上放送局や独立プロダクションから購入し、アリランで字幕を付けます。2007年11月の時点で、アリラン自主制作の番組は50.6%、委託制作された番組は23.2%、購入した番組は26.2%となっています。詳細は表2に示すとおりです。

〈表2〉 番組の内訳
〈表2〉 番組の内訳
ニュース番組の材料は、現場での取材、ヨンハップ通信(Yonhap News)、新聞、放送局、インターネットなど、さまざまなメディアソースから取得します。アリランが独自で取材したニュースと他のソースから取得したニュースを切り分けるのは必ずしも容易ではありませんが、他のソースから取得したニュースもアリランの独自取材で編集して報道する必要があります。ニュースはすべてアリランの独自番組として報道するほうが安全です。

7.スタッフ

アリランTVで働く206人のスタッフのうち、157人(76.2%)は番組制作に携わっています。表3はアリランのスタッフの内訳を示しています。

<表3> 放送と制作のスタッフ
〈表3〉 番組の内訳
8.資本金と予算

アリランTVの収入源は企業としての収益と公的資金(放送発展基金)の両方です。企業収益と公的資金の割合は年によって変わりますが、平均すればおよそ40:60です。2007年度のアリランの予算は460億ウォン(約5000万ドル)でした。このうち212億ウォンはアリランの企業収益を財源とし、残りの248億ウォンは放送発展基金(Broadcasting Development Fund)を財源としています。

9.オーナーとスポンサー

政府の政策に基づいて創設された公的資金を一部財源として運営されている公共放送であるにもかかわらず、アリランTVの放送活動は一定の独立性を保っています。しかし、韓国文化観光部の監督下ある半独立の資金によって創設、運営されていることから、政策的サポートと資金提供には「韓国政府のための海外向けPR放送に必要」という枠がはめられます。また、公的資金によって援助されている組織というアリランTVの法的地位からして、企業としての利益を追求するための明確なモデルの確立という面でも制約があり、収入の多くを放送発展基金に頼らざるをえなくなっています。

半官半民の組織としてのアリランTVの地位は、2007年4月に発効した「公的機関の運営に関する法律」(Laws on Operation of Public Organizations)に基づいています。この法律に従い、アリランTVは公的組織としての責任と権利を持つともに、放送と日常業務における独立性を維持しています。

10.克服すべき課題

今日、アリランTVはアジアを代表するグローバルな放送局として世界的に認められ、韓国の海外向け外国語公共チャンネルとして国のイメージを高める役割をはたしています。これを足がかりとし、アリランTVは衛星ネットワークの拡充を通じて海外で1億人の視聴者を確保しようと努めています。このためには、世界全体を対象とした現在の戦略から世界のさまざまな地域の視聴者のニーズに応じたきめ細かい対応への転換が必要になります。

先に述べたように、アラビア語の番組はこうした転換の第一歩となるものです。ロシア語、スペイン語、中国語、ヒンズー語の新しいチャンネルの創設は、アジアの枠を超えて韓流ブームをさらに西のほうに推し進めようとする動きを示しています。こうした動きの中、各国や各地域で多くの加入者を抱えている衛星通信業者やプラットフォームオペレーターとの協力も必要になります。 ただし、こうした努力も、国際競争力の強化に向けたアリランTV自身の休みない努力がなければ水泡に帰します。自国をPRしようとする外国語チャンネル間の競争が激化する中、アリランがこの競争に勝ち抜くには、番組の明確な差別化と向上が不可欠です。 これらすべてクリアするには、次のようないくつかの政策上の課題を解決しなければなりません。

金 泰元

韓国アリラン・テレビ 革新・政策企画室 次長

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