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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第20回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2012年3月~8月

東日本大震災、テレビは海外にどう伝え、海外はどう受けとめたのか

メディアのなかの東日本大震災 ~ 世界はどう見たのか

音 好宏
上智大学文学部新聞学科 教授

 2011年3月11日、東日本大震災発生のニュースは、瞬く間に全世界に伝わった。

 今回の大地震によって発生した巨大な津波が、家屋や車を飲み込んでいくといった衝撃的なシーンをとらえた映像が、メディアを介して全世界に伝えられることで、この自然災害の大きさを世界の人々に実感させることとなった。東日本大震災は、これらの映像を通して、世界中に認識されたとも言えよう。

 これらの地震発生当初の被災地の状況を伝える映像は、日本の報道機関が撮影した映像がほとんどであった。諸外国のメディアは、それらの映像を利用することで、今回の震災の被害の甚大さを伝えようとした。そのような対応が可能となったのは、今回の大震災が情報通信基盤や報道機関の取材体制が比較的整備された日本において発生した巨大自然災害であったからとも言える。現代社会においては、各国のメディアが国際的な連携を取りながら報道活動を行うことができるようにはなっている。

 ただし、それらの報道の受け止め方が、各国同様であったかといえば、今回の震災の当事国である日本とその他の国々とでは随分と異なり、場合によっては日本という国に対する誤った認識が広く流布したところもあるようだ。

 そして、そのような誤解を生んだ一因に、情報通信ネットワークが発達した現代社会の特質が関係しているように思う。つまり、情報通信ネットワークが整備されることにより、流通する情報量は飛躍的に増大してきたが、その受容過程における理解度が情報量の増大と比例する形で向上したとは言えない。

 震災によって被害を受けた被災地の姿が、世界に報じられることにより、世界各国から多くの支援が日本に届けられ、国境を越えた新たな「絆」が生まれたことも確かであるが、一方で、被災した「日本の姿」が正確に伝えられたかと言えば、明らかな誤解を生んでしまったケースも少なくない。

 加えて、今回の震災は、原発問題という大きな問題を引き起こした。それは、震災により甚大な被害を被った東京電力・福島第一原子力発電所で、原子炉の制御がままならなくなり、放射能物質の断続的な漏洩という、これまでほとんどの国が経験したことのない新たな問題であった。周知の通り原発問題は、それぞれの国の事情のなかで、政治的な問題を内包する形で存在する場合が多く、今回の日本の原発問題は、それぞれの国の原発問題とリンクする形で、解釈、受容されていった。

 その後、海外の有力メディアは、被災地の取材に入るとともに、福島原発の問題をそれぞれの国の原発事情のなかで取材し、本国に伝えることになる。

 興味深いことに、これらの日本以外の国々のメディアによる取材・報道内容が、その本国の視聴者のみならず、インターネット等を経由して、日本の視聴者にももたらされることで、日本のメディアによる報道内容とのギャップが可視化され、日本の視聴者の不安感が増幅されていくといった状況も生み出されていった。

 国際的な報道において、ニュースの送り手が「エスノセントリズム(自民族中心主義)」に傾きがちであることは、国際コミュニケーションにおける常識とすらなっている。それゆえに国際報道に携わる者は、この誘惑とどう向き合うのか、そして、自国文化の文脈で海外のニュースをとらえることによって生ずる誤解をどう防ぐのかが、問われることになる。

 すでに震災発生から1年が経とうとしているが、この1年を振り返るとき、今回の大震災、そして、原発問題は、現代メディアに内在する本質的な問題を数多く投げかけたように思う。その1つが、今回の震災報道、原発報道が世界を駆け巡る国際コミュニケーションの過程において、テレビというメディアによって生じた現実誤認の生成であったことは否めない。その意味においては、東日本震災報道は、現代社会のグローバル化、電気通信技術の今日的展開が進むなかでの報道機関のありよう、テレビ・メディアのありようをも問うことになったと言えるのではなかろうか。

 本シンポジウムは、2011年3月に発生した東日本大震災とメディアのあり方を、震災の当事国である日本のメディア関係者、そして、各国のメディア関係者と振り返ることで、グローバル時代に求められる災害報道のあり方、そして、そこに内在するメディアシステムの課題を論ずるものである。

音 好宏

上智大学文学部新聞学科 教授

1961年、札幌生まれ。上智大学大学院博士課程修了。 日本民間放送連盟研究所勤務を経て、上智大学文学部新聞学科講師。 同助教授、コロンビア大学客員研究員などを経て、2007年より現職。 専門はメディア論。情報社会論。 著書に『放送メディアの現代的展開』(ニューメディア・2007年)などがある。

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