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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第22回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2014年3月~12月

アジア太平洋地域のテレビ局とインターネット

マレーシアにおけるIPベースおよびユーザー制作コンテンツをめぐる
課題とアプローチ

Hazizul Jaya Ab Rahim, Abdul Manap Abdul Hamid

概要

人類が共存するうえで、情報とコミュニケーションはもっとも重要な知識である。近年コミュニケーションの発展においては、技術の活用が以前にも増して重視されてきた。今日テレビとコンピューターの境界はあいまいになってきている。そしてテレビは、その存在を全面的に再定義する必要に迫られている。
テレビがマレーシアに導入されたのは、政府がマレーシア国営放送(RTM)TV1を開局した1963年後半のことであった。マレーシアでの初期のテレビ放送は、政府が国民のために所有・運営する公共放送としての役割を担っていた。その番組編成は、教育、情報、文化関連が大半を占めていた(Hassan Basri、Ahmad、Mohamad、Azlan、Hashim、2011年)。長期にわたり存在するTV1は、マレーシアの歴史と継続性を知る上でよい手がかりとなっている。しかしながら、同局も変化する環境に適応する必要があり、若年層の視聴者を取り込むよう努めるべきである。長年の視聴者を維持するだけに甘んじていてはならないのだ。なぜなら国営テレビ局として、より幅広い視聴者層の獲得を目指して他社と競い合う必要があるからだ。
若手幹部たちは、RTMの重要性、特に今日のマスコミ界におけるTV1の重要性を十分認識し、TV1は国家目標を推進し、社会の特定の層を満足させていると捉えている。政府のメッセージを国民に効率的に伝えることができるという点で、国営放送局の存在はとても重要である。RTMはその重要性、伝統、他局よりも保守的な姿勢という観点から英国放送協会(BBC)と同一視される。1969年10月に、同じく政府の情報省直轄で二番目の放送局が開設された。以下に挙げるのは、当初からほとんど変更が加えられないまま放送政策の基礎をなしてきた指針である。

  1. 国民の理解を最大限に深められるよう、政府の政策および計画を詳細にわたりできる限り幅広く説明すること。
  2. 政府の要請に則した変革を達成するため、国民の関心と世論を促進すること。

ただし、マレーシアの放送界の発展を阻害し続けてきた大きな要因として、「1988年放送法」の存在が指摘できる。同法は厳格かつ硬直的で、マレーシア国民が視聴できるテレビ番組の種類を決定する多大な権限を政府に与えている。1988年に同法は、放送業、特にテレビの更なる商業化を明らかに見据えて制定された。実際、放送業の「規制撤廃」が進む中、放送法は放送事業者の認可や放送内容の判断に関する権利をすべて情報省に与えた。同法の下では、放送業への参入を図るいかなる事業者も事前に情報省に届け出て許可を得なければならない。
マレーシアの放送業界はまた、ウェブサイトやポータルサイトを通じて出版分野にまで事業を拡大している。政府の強力な政策と市場自由化に支えられ、同国では情報通信技術(ICT)分野が急成長しているのだ。政府は2011年に「デジタル・マレーシア」という国家計画を立ち上げた。これは、経済のあらゆる側面でICTの利用を浸透させ、2020年までにマレーシアをデジタル経済先進国に進展させるという計画だ。
そして、ICTに関連するあらゆる事項を監督するために新たな法律が制定された。「1998年通信マルチメディア法(法律第588号)」は1998年10月15日付官報で公表された。同法の主要な目的は以下の通りである。通信・マルチメディア業界のために国家政策目標を促進すること、通信・マルチメディア業界のための国家政策目標を支えるため免許・規制の枠組みを確立すること、「通信マルチメディア委員会(MCMC)」の権限および機能を確立すること、同法の執行に関する権限および手続きを確立すること、である。このように、放送とICTに関連する全事項はMCMCによって管理されている。
こうした見直し期間中に、数々のデジタル製品が開発・販売され、インターネットの利用が増加したおかげで、マレーシアでは家庭内での娯楽が大きく進化してきた。大型画面テレビ、ホームシアター・システム、テレビゲーム機器、ケーブルテレビ、高速インターネット回線経由のオンデマンド映画配信、ブルーレイディスク・プレイヤーといった技術によって、あらゆる家庭がデジタル・エンターテイメントの拠点へと変わることが可能になっている。新しい戦略を始める時期を迎えているといえる。
通称で国家ブロードバンド推進(NBI)政策と呼ばれる国家戦略(The National Broadband Implementation Strategy)では、ブロードバンドを全国に普及させるという国家指針が掲げられている。2007年にマレーシア政府は、2010年末までに50%の世帯にブロードバンドを普及させるという目標を設定した(通信マルチメディア委員会、2013年)。ブロードバンド・サービスの普及は、エンジニアリング、地域ごとのコンテンツ開発、放送といった他分野へ波及効果を及ぼすと考えられる。既存のブロードバンドと携帯電話のサービス区域はユニバーサル・サービス提供(USP)政策の下で拡大する一方、今後のサービスは有線または無線による接続で提供されると見込まれる。こうしてあらゆる要素がマレーシアの規制、執行、コンテンツ開発政策の中に取り込まれ、従来型、デジタル、ハイブリッド各種形式の放送において新しい技術を採用できるような下地ができた。


課題の設定

この報告書では、新たな使命と目標をもった国営テレビ局として今後も生き残るために、RTMが直面している現在の課題について議論していく。国内の現在の視聴者からどのようなプレッシャーを受けて、RTMは競争力維持のために自らのアイデンティティを改革しようとしているのか。またこうした自己改革は、特に新世代の視聴者に向けた新しいサービスの提供方法や訴求法といった点で、どのような結果をもたらしているのか。
当報告書ではこのような論点を広い視野から考察するために、RTMによる新チャンネル導入、民間テレビ局、ナローキャスティング(少数視聴者向け放送)の台頭対一般放送、国営放送にとっての強力な競合・目下の脅威である利用者に使いやすい新技術の登場を検討する。


マレーシア人の現状

マレーシア人は携帯端末経由でインターネットにアクセスするのを好む傾向がある。モバイル広告会社InMobiと調査会社Decision Fuelが2011年後半に実施した共同調査によると、インターネットへのアクセスは「主に」携帯端末を使う、または携帯端末「のみ」使う人を合わせて同国のインターネット利用者の半分以上を占めていた。また、多くのマレーシア人はなんらかの方法で毎日インターネットに接続していることが判明した。今後数年にわたり国内総生産(GDP)の増加が予測される中、マレーシア人のデジタル機器消費額やデジタル技術への支出は継続的な増加が見込まれている。

表1:マレーシアの基本指標(GDP/消費者物価指数[CPI] )(通信マルチメディア委員会、2013年)

表1:マレーシアの基本指標(GDP/消費者物価指数[CPI] )(通信マルチメディア委員会、2013年)

表2:州別テレビ世帯普及率(通信マルチメディア委員会、2013年)

表2:州別テレビ世帯普及率(通信マルチメディア委員会、2013年)

2012年に全人口におけるテレビ普及率は97.7%だった。各州で平均90~99%の普及率を示し、大部分のマレーシア人は無料放送(FTA)または有料放送サービス経由でテレビを視聴できる環境にある。

表3:無料放送(FTA)テレビの放送時間(分)(通信マルチメディア委員会、2013年)

表3:無料放送(FTA)テレビの放送時間(分)(通信マルチメディア委員会、2013年)

表4:有料放送加入数(通信マルチメディア委員会、2013年)

表4:有料放送加入数(通信マルチメディア委員会、2013年)

表5:インターネット・プロトコル(IP)テレビ加入数(通信マルチメディア委員会、2013年)

表5:インターネット・プロトコル(IP)テレビ加入数(通信マルチメディア委員会、2013年)
2012年にマレーシア国内のFTA放送局による放送時間は、総計で約332万2,360分であった。また2012年の有料放送テレビ加入数は約341万5,000件に上り、IPテレビ加入数は51万9,700件であった。

表6:州別コンピューター世帯普及率(2012年)(通信マルチメディア委員会、2013年)

表6:州別コンピューター世帯普及率(2012年)(通信マルチメディア委員会、2013年)
上記の統計から、大部分の世帯が携帯端末を好む傾向にあることがわかる。この傾向は、デジタル領域にアクセスする主要な端末としてノートパソコンやタブレットを好む世帯が多数を占めることにも表れている。
技術発展によりメディア事業者たちは、インタラクティブサービスを通じて視聴者について検討する機会が増えている。そして多くのメディア事業者が変化の波にのることによって、間接的に視聴者の社会文化的な生活に変化をもたらしている。例えば双方向性機能がますます強化された新しいメディアを使いこなすことで、視聴者のメディア・リテラシーも変化している。
通信・マルチメディア産業に関する国家政策目標は、マレーシアを通信、マルチメディアにおける情報・コンテンツサービスの世界的な中心地、拠点にするべく10個の課題を概説している。
では競合事業者はどのような行動をとったのか?競合たちはどうやって、新しいコンテンツや市場に出回る様々なプラットフォーム、端末を通した視聴体験に対する新時代の視聴者の欲求を満たしているのか?


テレコム・マレーシア(HyppTV)

テレコム・マレーシア(TM)は、文字通り国内の電話通信・放送インフラを築いてきた。同社は1985年に国内初の移動体通信ネットワークATUR450を、1995年には初のGSMネットワークを確立する上で重要な役割を果した。2003年には固定系および移動体系サービスを提供するマレーシア国内最大の統合通信ネットワーク事業者であった(テレコム・マレーシア、2012年)。
TMはさらに事業を拡大し、IPテレビサービスの自社ブランドであるHyppTVを立ち上げコンテンツ業に参入した。同事業により、様々なコンテンツ・プロバイダーからコンテンツを集約し、次世代ネットワーク(NGN)経由で利用者にシームレスに配信することが可能になった。現在HyppTVは12のスポーツチャンネルを含む107チャンネルを取りそろえている。
加えて、2012年6月13日にはMy1Contentを開始した。これはコンテンツ事業者がコンテンツの売買取引を行う初めての統合的なデジタル市場となった。この市場が構築されたコンテンツ・サービス・デリバリー・プラットフォーム(CSDP)は、TMがマレーシア政府と共同で、地域性の高いコンテンツ産業の確立・推進を目指して開発したものだ。
HyppTVは、同サービスの携帯用アプリケーションを以下のように説明している。「HyppTVはどこでも視聴できるようになりました!これはUniFi(光ファイバー)やStreamyx(ブロードバンド)4Mbps・8Mbps契約でHyppTVをご利用の加入者限定のサービスです。加入者であれば、いつどこにいても、タブレット端末、スマートフォン、デスクトップでお気に入りの番組や世界の最新ニュースを見たり、子供を楽しませたりすることができるのです。Wifiまたは3G /4G回線さえあれば、コンテンツを楽しんでいただけます。」(Google Play)

図1:HyppTVの携帯端末用アプリケーションのユーザーエクスぺリエンス(UX)キャプチャ(画面)

図1:HyppTVの携帯端末用アプリケーションのユーザーエクスぺリエンス(UX)キャプチャ(画面)

アストロ

アストロ・マレーシア・ホールディングスは、マレーシアと東南アジアで有料テレビ、ラジオ、出版、デジタルメディアの主要4分野で事業を展開する総合メディア・エンターテイメント企業である。マレーシアのテレビ所有世帯における約52%の普及率にあたる350万世帯以上の顧客基盤を誇るアストロは、37のハイビジョン(HD)チャンネルを含む170のテレビチャンネルを直接受信(DTH)衛星放送テレビ、IPテレビ、オーバーザトップ(OTT)プラットフォームにて提供している。同社は、アストロ・ビヨンド(Astro B.yond)とアストロ・オン・ザ・ゴー(Astro On-The-Go:AOTG)という名前でHD、3D、パーソナル・ビデオ・レコーディング(PVR)、ビデオ・オン・デマンド(VOD)、IPテレビの各種サービスを提供している。またアストロは、全マレーシアのデジタルデバイド(情報格差)を解消するという約束を果たすために、初心者向けDTH衛星テレビサービスであるNJOIを導入した。これは国内初の加入を必要としない衛星テレビ放送で、テレビ22チャンネル、ラジオ20チャンネルを提供している。
アストロ・ラジオは、主要な言語における最も評価の高い放送局を抱え、地上波放送およびデジタル放送の両方で試聴できる。2012年4月時点で週間総聴取者数は約1,300万人に上り、国内ラジオ聴取者の52%を占めている。同社のデジタル部門は、デジタル出版、アプリケーション、プラットフォームに加え、娯楽ライフスタイル雑誌の地域別出版も手掛けている。

図2:アストロの2013年実績データ(アストロ2013年年次報告書)

図2:アストロの2013年実績データ(アストロ2013年年次報告書)

Astro On-The-Go(AOTG)はいつでもどこでも利用可能な娯楽コンテンツ配信サービスである。複数の機器でのコンテンツ視聴を可能にし、配信領域を家庭から個々人にまで広げられる柔軟性を求める消費者の要望に勢いを得て、アストロはAOTGを2012年5月に開始した。これはスマートフォン、タブレット、パソコン向けのOTTサービスである。チャンネルの構成は、イベントの生中継、子供向けコンテンツ、ニュース・娯楽のテレビ番組、ラジオ番組、「キャッチアップ(見逃し番組)」サービス、VODコンテンツと多岐にわたる。AOTGは現在アストロ加入者以外でも契約でき、顧客は見たいコンテンツ、時間や場所、使用する機器を限定されずに利用できる。

図3:アストロのタブレットおよび携帯機器用アプリケーションのUXキャプチャ(画面)
http://my.astroonthego.com/en/non-subscriber/home

図3:アストロのタブレットおよび携帯機器用アプリケーションのUXキャプチャ(画面)


MEDIAPRIMA

メディア・プリマはTV3、ntv7、8TV、TV9からなる民間FTAテレビ局である。同グループは2012年12月12日に増強したデジタル事業部である「メディア・プリマ・デジタル」を公表した。中でもアルト・メディアは、複数の受賞歴を持つ国内1位の画期的なビデオ・ポータルサイト「トントン(Tonton)」の設立に大きく貢献した。これに加えアルト・メディアは、同グループのテレビ・ラジオネットワークのポータルサイトのみならず、国内トップの娯楽ライフスタイル・ポータルであるGua(Gua.com.my)も運営している。Tonton.com.myなどのウェブ・テレビ事業ではプログラミングを変更し、現在ではメディア・プリマの番組の再放送を視聴者が好きな時に見られるようになっている。

図4:トントンのUXキャプチャ(画面)
http://live.tonton.com.my/livetv/

図4:トントンのUXキャプチャ(画面)


RTM

ラジオ・テレビ両方における放送業の急速な発展は、Angkasapuri Complexの中で始まった。あらゆる階層の視聴者のニーズに応えるため、放送時間が延長された。とりわけ今日のIT社会において、テレビの発展は目まぐるしい。国内制作の番組を80%、海外・輸入番組を20%の割合で放送する取り組みは重視されている。インターネットの登場はラジオやテレビの役割を低減させてはいない。むしろネットを活用して、情報を世界に向けて拡散させるラジオやテレビが持つ機能を強化することが可能になっている。
RTMのビジョンは、「1マレーシア」コンセプトを掲げつつ、世界クラスの放送水準をもった国内1位の活力ある組織になることである。同社の使命は、この国家コンセプトを実現する一方で、最新技術を使って視聴者の様々な要求に応える競争水準を維持した情報・娯楽番組をラジオおよびテレビで放送することである。RTMの主要目標のうち三つは以下の通りである。「1マレーシア」コンセプトを掲げしつつ、放送サービスを通じて先駆的な国家建設者となること、最大数の視聴者に向けた情報技術と新しいメディアのアイディア開発に尽力すること、国家建設者として公用語マレー語を使用すること、である。
RTMには、国家の開発計画と合致する最優先の目標がある。それは国家融和の達成である。加えて、情報と教養を提供しながら、国民の興味を喚起し市民の意識を向上させることを目指している。RTMは新千年紀を迎え、公共放送局として情報と娯楽を提供することをはじめとする、「インフォテイメント」コンセプトを強化しつつある。


Mystream

RTMのライブストリーム放送は現在試験的に運用されている。ライブストリーム放送は2006年初頭に始まり、インターネットまたはIPを通じて視聴者層を拡大することを唯一の目的としていた。現在誰もが、ネット上で好きなラジオやテレビ番組を視聴することができる。2012年にはライブストリーミングサービスが拡充され、ウェブサイト(http://mystream.rtm.gov.my/)にアクセスすれば、TV1、TV2、TVi、Galaksi Muzik、1News、ParlimenTV、BES1をはじめとして、既存の番組や試験的番組、ニッチな視聴者層に向けた番組を視聴することができるようになった。

図5:マイストリームのUXキャプチャ(画面)
http://mystream.rtm.gov.my/

図5:マイストリームのUXキャプチャ(画面)

図6:マイストリーム:2012年国内/世界でのストリーミングのヒット数とデータ転送量

図6:マイストリーム:2012年国内/世界でのストリーミングのヒット数とデータ転送量

上の図は、マイストリームがサービスを開始した2012年以降の国内、世界でのヒット数の増加を示したグラフである。若い世代でスポーツチャンネルの人気が高まりつつあるため、サッカー試合のライブストリーム放送が多数の視聴者の獲得につながった。またRTMは、ライブストリーミング中にすべての独立系(シンジケート)映画・シリーズ番組を確実にフィルタリングするという重要な一歩を踏み出している。ビデオウェブ・フィルタリングのためのVOD・コンテンツ管理システムのライセンスを使用することで、地上放送専用の独立系番組をすべてフィルタリングすることが可能になった。


Myklik

今日我々はインターネットを通じて、マウスをクリックするだけで映画を見たり、音楽をダウンロードしたり、写真や画像を検索したり、さらには買い物をしたりといった、楽しい体験を享受できるようになった。これらはTV1に新たに加わった機能の一部であり、以前は提供できなかったサービスが続々と可能になっている。さらにはこうした体験を後押しするように、現在市場は携帯ノートパソコンやタブレットであふれている。利用者がメニューやリストから好きな番組を選び、すぐに冒頭から視聴できる一般にVODと呼ばれるサービスもその一つである。
RTMのVODサービスは2009年に導入され、2012年初頭にMyklik(http://myklik.rtm.gov.my)として新たにブランド名がつけられた。MyklikはVOD専用のウェブサイトである。同ウェブサイトでは、RTM制作のあらゆる傑作番組から、視聴者が選択した番組をそのテレビ放映後に視聴することができる。

図7:Myklik:ウェブサイトのUXキャプチャ(画面)
http://myklik.rtm.gov.my/desktop/home

図7:Myklik:ウェブサイトのUXキャプチャ(画面)


図8:Myklikのヒット数

図8:Myklikのヒット数

上記のグラフからわかるように、2012年1月のMyklik導入以降同年11月まで視聴者からのアクセス数と利用量は増加しており、10月に最大のアクセス数を記録した。Myklikへの需要が拡大する中、RTMは近いうちに携帯機器でも利用可能にしたいと検討している。


RTMモバイル

スマートフォンとタブレットが最も好まれる端末になりつつある中、RTMは2013年10月にアンドロイド携帯電話のための携帯アプリケーションを立ち上げ、続いて11月にはアップル社端末のためのiOSアプリケーションも導入した。サービスの中には、TV1、TV2、TVi、Muzik Aktif、RTM Parliamentのテレビ放送のストリーミングが含まれる。また、Nasional FM、Radio Klasik、MinnalFM、AiFm、TraxxFM、KLfm、AsyikFM、Vfm、WaiFM、MuzikFMのラジオ放送のストリーミングもある。番組ガイド機能はテレビ、ラジオともに利用可能で、お気に入りの番組を利用者に知らせるリマインダー機能を設定できる。

図9:RTM アンドロイドおよびiOSのための携帯アプリケーション
https://play.google.com/store/apps/details?id=my.gov.rtm.mobile
https://itunes.apple.com/us/app/rtm-mobile/id777391399?mt=8

図9:RTM アンドロイドおよびiOSのための携帯アプリケーション

アンドロイド用のRTMモバイルは、導入された2013年10月16日から12月21日までの間に世界中でのダウンロード数が6,450回に達した。

図10:RTMモバイル:2013年10月16日から12月21日までのアンドロイド・アプリケーションのダウンロード数(グーグル‐グーグルプレイ、2013年)

図10:RTMモバイル:2013年10月16日から12月21日までのアンドロイド・アプリケーションのダウンロード数(グーグル‐グーグルプレイ、2013年)

図11:RTMモバイル:2013年10月16日から12月21日までのアンドロイド・アプリケーションの国別およびプロバイダー別ダウンロード数(グーグル‐グーグルプレイ、2013年)

図11:RTMモバイル:2013年10月16日から12月21日までのアンドロイド・アプリケーションの国別およびプロバイダー別ダウンロード数(グーグル‐グーグルプレイ、2013年)

6,450回のダウンロード中、国内でのダウンロードは90.39%、シンガポールでのダウンロードは6.28%を占めていた。RTMの番組を携帯電話で見ている視聴者は増加しており、この傾向は続くと見込まれる。


結論

既存のメディア規制とコンテンツ管理体制を通して政府はメディア・コンテンツを監視している。インターネット上で放送コンテンツを提供することは、これまでの提供方法と比較して視聴者により大きな満足を与えているとみられる。同報告書で指摘するとおり、コンテンツと携帯性のバランスが取れたポータルサイトが、今日マレーシアのテレビ放送局の中で最も注目を集めつつある。
新しいメディアと通信技術の出現により、人々が知識や情報を伝達し共有する方法は大きく変化した。こうした新技術により、一般市民が参加し関与する新たな機会が増大し、メディアの利用を一層拡大できる可能性がもたらされている(Abdul Latif、Wan Mahmud、Salman、2013年)。
したがって、マレーシアの国営放送が競争力を維持しながら生き残り、行動力のあるダイナミックな若い視聴者層を引き付けるためには、コンテンツ提供において今以上に画期的な方法を導入する必要があると結論づけられる。


参考文献
  • Abdul LatifRoslina , Wan MahmudWan Amizah, SalmanAli. (2013). A Broadcasting History of Malaysia: Progress and Shifts. Asian Social Science, 9 (6).
  • Google – Google Play. (2013).
  • Government of Malaysia. (1998). Communications and Multimedia Act 588. Communications and Multimedia Act 588. MALAYSIA.
  • Hassan BasriFuziah Kartini, AhmadAbdul Latiff, MohamadEmma Mirza Wati, AzlanArina Anis, HashimHasrul. (2011). The Survival of Malaysia’s National Television Within a Changing Mediascape. The Innovation Journal: The Public Sector Innovation Journal.
  • Malaysian Communication Multimedia Commission. (2013). COMMUNICATIONS & MULTIMEDIA (POCKETS BOOK OF STATISTICS).
  • Malaysian Communications and Multimedia Commission. (2013). Malaysian Communications and Multimedia Commission. 参照先:http://www.skmm.gov.my/Sectors/Broadband/National-Broadband-Initiative.aspx
  • Telekom Malaysia Berhad. (2012). 2012 Annual report. TRUST.

※リンク先は掲載時のものです。現在は存在しないか変更されている可能性があります。

Hazizul Jaya Ab Rahim, Abdul Manap Abdul Hamid

HAZIZUL JAYA AB RAHIM

デザイナー、Radio Television Malaysia

MARA工科大学卒(グラフィック)
MARA工科大学修士課程修了(ビジュアル・コミュニケーション&ニューメディア)

グラフィック・デザイン、ポスト・プロダクション、マルチメディアやインタラクティブTVに4年以上携わり、RTMを含むマレーシアの公共放送で9年間勤務。現在、RTMでユーザーインターフェース、インタラクティブTVのデザイン、ならびにニューメディアを担当。


ABDUL MANAP ABDUL HAMID

Radio Television Malaysiaオンライン副局長

ビクトリア大学ウェリントン卒(映画・演劇研究、アジア研究)

ドラマ部門、ニュースと時事問題部門(Radio Television Malaysia News)などを中心に34年間放送に携わり、その内12年間はマレーシア首相官邸の広報部署に出向。現在、プログラマーやグラフィック・デザイナー、テレビとラジオのプロデューサーのチームを率いてRTMのオフィシャルポータルサイトやテレビ番組4つ、ラジオ番組9つのライブストリーミング、ならびにビデオ・オン・デマンドの開発とコンテンツ・マネジメントを担当。

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