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平和構築のためのテレビ番組を使った草の根教育支援

 2015年度、JAMCOは「平和構築のためのテレビ番組を使った草の根教育支援」と題し、イスラム圏への教育支援活動を行った。
 本事業は、途上国、とりわけイスラム圏での教育活動を支援することにより、教育を受ける人々の拡大、教育水準の向上を通じた貧困からの脱出、地域の安定に寄与し、ひいては国際的な平和構築の一助を目指すものである。

 JAMCOはNHKの理科の教育番組「ふしぎがいっぱい」のシリーズ13本を初めてアラビア語版に改編。エジプトの放送局のスタッフの協力をえて、子供に分かりやすいアラビア語に翻訳しナレーションと字幕を付けた。
 子ども向けのアラビア語で日本のテレビ番組を改編することは、日本国内では困難であり現地(エジプト)のテレビ局関係者の協力を得た。

 2015年10月、共同研究者である現代イスラム研究センターの宮田律理事長が、「ふしぎがいっぱい(Wonderful Science)」アラビア語版のDVDを持ってパレスチナを訪問した。
 UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)、日本国際ボランティアセンター(JVC)パレスチナ事業現地代表の協力で訪れたパレスチナ・ワクフ(イスラムの宗教的寄進)省が運営する学校で、DVDを見せると一様にクオリティの高さに驚いた様子で、「アラビア語の翻訳もすばらしい」と語るスタッフもいて、大いに関心を示された。

  UNRWAのヨルダン・アンマン北部地区の学校ではJAMCOの事業に関心を持ったようで、DVDを生徒たちが食い入るように見ていたという。

 UNRWAの中には、パレスチナでは日本や日本人に対する信頼が篤く、「それが日本の支援にとって『資産』になっている」という見方がある。これまで教育番組の提供は多くないという。アラビア語に訳された日本の教育番組への関心は相当あるということで、今後もアラビア語に訳された番組本数を増やし、有効な提供先を探すなどの事業の継続が必要だとの報告があった。

 また、イラクでの医療支援やシリア難民の医療支援を行っているNPO「JIM-NET」の協力をいただき、2015年11月、佐藤事務局長にDVDを現地に持って行ってもらった。
 1枚は、イラクのクルド地域の中心都市アルビルの郊外にある、ダラシャクラン・シリア人難民キャンプで、子どもの会の際、上映していただいた。
 佐藤氏が滞在中の2016年1月に行うはずが、停電でできず、ローカルスタッフに上映会をしてもらったという。

 クルド地域にあるJIM-NETのアルビル事務所では、バグダッドから子どものがん患者が訪れた際、DVDを見てもらった。病院内の学級で教える先生もバスラ、バグダッドから来ており、教材を使って子どもたちに授業を行った。

 バスラとバグダッドのJIM-NETスタッフにDVDを1枚ずつ持っていってもらい、病院内での子どもたちの授業に使ってもらうことになっている。

 中東は政情が不安定な地域が少なくなく、番組の提供に向けたテレビ局との連携が取りにくい事情があるが、このDVDは、テレビの放送も可能な方式で制作されており、パレスチナ公共放送、UNRWAテレビへの周知活動を進めている。

 今回の活動から、アラビア語版の日本の理科番組が、パレスチナ、ヨルダンの学校で、関係者から大きな関心を得て教育支援に役立つことが分かった。
 またアラビア語版の番組はイラクのクルド地域でも有効に活用されており、日本の教育番組をイスラム地域での草の根の教育支援に活用することの意義と継続・拡大の必要性が確認できたと考える。


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