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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第18回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2009年1月16日~2月28日

アジア諸国の公共放送

閉会にあたって

荻野 崇一郎
(財)放送番組国際交流センター 交流推進部長

「public」という英単語は、多くのアジア人にとって正確に理解することが難しい言葉のようです。一例として、Wikipediaの定義によれば、日本を含め多くの国でpublic schoolとは「主として税収入によって費用を賄い、多くの場合は政府または自治体によって運営される初等、或いは中等教育機関」のことを指します。ところが、英国でpublic schoolとは「生徒が授業料の支払いを求められる伝統的な私立の中等教育機関であり、通常は全寮制である。」そうです。

昨年の夏に日本の全国紙に載った小さな記事が日本社会に大騒動を惹き起こしました。その記事は、イタリアはフィレンツェのさる有名な歴史的建造物の壁に何人かの日本人旅行者が落書きをしたというものでした。不埒な旅行者は総じて大学生でしたが、その内の一人は学校教師であることが判明しました。彼等に対する批判が高まり、とりわけ、学校教師にあるまじき、公共道徳に欠ける行為として、教師に非難が集中し、彼はとうとう解雇されて教職を失ってしまいました。ところが、自国の国宝的建造物の壁に落書きをされた当のイタリア人達は、この悲劇的な結末に対して極めてイタリア的な公共道徳観を示したのです。曰く、「人は間違いを犯すものだ。こんなことで教師を解雇するなんて、非人間的な処罰だ。」と。

publicという言葉を世界中のあらゆる社会が共有できるように普遍的に定義するのは、かように難しいことなのです。publicという言葉が「国家」の意味合いを内包している社会もあれば、「政府」の意味合いをより強く持つ社会もあります。また、その言葉が国民に共有されるものを意味する社会もあるでしょう。

公共放送のモデルは、西欧諸国の公共放送であると言われています。しかし、だからといって、どの国の公共放送も同じようなものであるということではありません。また、ある国の公共放送が、他の国のそれよりも進化しているということでもないでしょう。publicという言葉の意味合いが社会によって異なるように、公共放送の実態も夫々の社会の特徴を反映して多様です。このフォーラムでなされた報告や討議が、皆様がアジアを理解する一助となれば喜びです。

閉会にあたって、本件フォーラムに参加いただいた報告者や討議者、そして当サイトで本フォーラムを各報告や討議をお読み下さり、ご意見をお寄せ下さった皆様に心からの感謝を申し上げます。また、このプロジェクトに対する温かいご支援・ご厚情を賜った国際交流基金、放送文化基金、総務省、外務省、NHK, 日本民間放送連盟の関係各位に対しましても、心からの謝意を表したいと思います。

荻野 崇一郎

(財)放送番組国際交流センター 交流推進部長

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