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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第28回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2020年2月~

発展途上国における教育コンテンツの役割と新たな可能性

日本の放送番組を利用したタンザニアでの女子中等教育と対日理解の促進

代表研究者 古谷 公文
一般社団法人 キリマンジャロの会 代表理事

要約

 タンザニア、キリマンジャロの麓の村・アルーシャに生徒数200人規模の全寮制女子中学校(Sakura Girls Secondary School)が、2016年1月に開校した。元慶應義塾大学名誉教授の故岩男壽美子氏が日本政府、企業、個人に働きかけ、その協力と支援のもとで創設したものである。アフリカの多くの国の女子は、初等教育終了後、10代前半で結婚するケースが多く、それが貧困の再生産の一要因になっていると言われている。この現状を変えていくため、この学校では、理数系に強い女性リーダー、創造的な人材の育成を目標にしている。放送文化基金の助成も得て、JAMCOやNHKインターナショナルが保有する番組を含む日本の放送番組(623番組)を教材として加え、授業に活用した。開校から3年を経過して、同放送番組の利用状況、課題、改善点等を以下の通りまとめた。

目的

 アフリカのタンザニアで女子中等教育の教材として日本の放送番組を活用し、授業内容の充実、創造的で理数系に強い女性リーダー育成を目的とし、対日理解促進も図っていく。

タンザニアの女子教育の現状

 小学校、中学校(4年間:ordinary level)高校教育(2年間:advanced level)女子は家事労働に追われながら、早婚、意図せざる妊娠等により、教育および社会参加の機会が損なわれ、その結果、上級学校においては女子生徒の比率は低下傾向。

SGSSプロジェクトとその関係者

■JICA
■一般社団法人キリマンジャロの会
■NGO Sakura Vision Tanzania
■さくら女子中学校(Sakura Girls Secondary School=SGSS)

さくら女子中学校
日本からの支援で進展
持続的運営への道筋
SGSSプロジェクト運営の概念図<2019.8>
方法

1. 番組選定方法

 番組選定にあたっては、主に以下の視点で行った。

  • タンザニアの理数科のカリキュラムに合った番組
  • カリキュラムに直接的には合っていなくとも、生徒の教科への興味を引きうる番組
  • 環境問題や自然保護、生命、健康に関する番組
  • 対日理解を促進する番組

2.授業での活用方法

  • トピックの導入として、生徒の興味を引き付ける目的で授業の初めに視聴。
  • 授業内容の補足として挿入。
  • 実験の事前学習として利用。
  • 実験器具や試薬の不足している内容について、番組で実験内容を補足した。

3.授業での使用頻度

 学習内容により頻度に差があり使用は不定期であるが、平均して週1~2回程度。
科学分野では特に「電気分解」、「酸とアルカリ」、生物分野では特に「血液の流れ」、「食べ物の消化」等、「実際に作業や実験が難しいもの」、「目で見るのが難しいもの」で映像教材を活用している。
 また、日本文化の授業においては、その導入部で日本を紹介するDVDを上映することで、まだ見たこともない日本の生活、慣習等を実感してもらうことで、生徒達の興味を喚起することができた。

4.図書館での活用状況

 週1回、図書館の時間があり、生徒は好きな番組を自由に選んで視聴している。図書館にはDVD試聴用として11台のパソコンを設置したが、視聴希望者が多く、常に満席の状態である。

結果

1.成果・効果

 前述のように、幅広い用途で大いに活用できている。授業の導入として生徒の知的好奇心を促進し、補足教材として知識・理解を深めることに役立っている。タンザニアの中等教育は一般的に1つの授業が40分×2コマ続きと長いため、生徒の集中を持続するための気分転換としても有効であると感じる。また、日本に比べ、実験器具を含めた視覚教材が不足しているため、それを補う貴重な教材となっている。特に10分から15分程度の短時間の番組は、授業に導入するにあたって扱いやすく、使用頻度が高い。(例/10 Minute of Science, Wonderful Science)
 加えて、対日理解のツールとしても非常に有効である。日本文化に関する番組はもちろんのこと、理数科の番組でも映像が日本で作られていることから常に日本の服装や建物などが映る為、生徒はそれらを興味深そうに観ている。

2.生徒の反響

 生徒にどの“番組が最も好きか”というアンケートを行なった。以下が上位5タイトル。生命や人体に関わるもの、日本文化に関する番組の人気が高いことが分かる。

  1. Wonderful Science Part3 Episode 5. The Miracle of Birth
  2. BEGIN JapanologyⅢ Episode 6. Dolls
  3. Super Cameras Episode 30. Body – Mysteries of Development
  4. Images of Japan Episode 10. Contemporary Sports & Traditional Entertainment
  5. Animal All-Stars Episode 4. The Slowest Moving Creature – Chameleon

 授業での視聴後は生徒に感想を書かせた。以下印象的なものをいくつか挙げる。

  • Wonderful Science Part3 Episode 5. The Miracle of Birth
     初めて生命誕生の過程を知り、とても感動した。将来母になるのが楽しみになった。また、将来医者になって、妊婦の出産を助けたいと思った。

  • Wonderful Science Part4 Episode 4. After We Eat
     どのように食べ物が消化されてエネルギーとなるのかよく分かった。胃の内部の様子を初めて観た。その仕組みはとても興味深く、勉強になった。

  • Wonderful Science Part3 Episode 9. What’s in Seawater?
     私たちが使っている塩が海水から作られていることを初めて知り、驚いた。実際に海水を沸騰させて塩を作ってみたい。

  • Images of Japan Episode 2. Working Women
     日本にはバスの運転手や、工事現場で働く女性がいることを知り、とても驚いた。タンザニアではこのような仕事は男しかしない。タンザニアも女性が様々な仕事に就けるようになると良いと思った。

  • BEGIN JapanologyⅣ Episode 7. Conveyor Belt Sushi
     食べ物がベルト・コンベアーの上を動いている様は面白かった。注文して待つ必要が無いので良いと思った。生の魚を食べることにも驚いた。いつか寿司を食べてみたい。


3.課題・改善点

  • 番組内容のわかる補足説明
     日頃授業で活用するにあたっては、事前にビデオの内容を確認する時間が取れず、タイトルだけで内容を判断して授業で使うこともある。その場合、タイトルからイメージしたものと内容が異なり、授業内容の補足として有効に働かないケースが生じる。より効果的、効率的に活用するために、今後は使用しながら随時、タイトルに加え内容の補足説明を加えていく必要がある。
     例)10 Minutes of Science Episode 14. Studying Chemicals (1) Hydrochloric Acid
     ‐タイトルだけでは塩酸の性質だけに触れているのか、塩酸の関わる化学反応実験まで収録されているのかが分からない。視聴してどのような実験が収録してあるのか記録しておけば、授業内容に応じて的確に利用することができる。

  • 字幕の必要性
     英語が苦手な生徒は、映像が長時間になると集中が続かない傾向にある。短時間の実験や自然科学系の番組は映像から理解しやすいが、30~40分程度の長編ドキュメンタリー番組は、映像情報だけでは理解が難しく、英語の苦手な生徒は途中で飽きてしまう。字幕を入れることで理解を助けるとともに、英語力向上にもつながると考えられる。

4.さくら女子中学校ならびにタンザニアで望まれると思われる番組

  • 日本語教育の番組
     日本文化の授業で時々日本語を教えているが、生徒は日本語に対して高い関心を持っており、授業時間以外にも質問に来たり、図書館にある日本語教育の本で自主的に勉強したりしている。学校外でも「日本語を教えて欲しい」という要望を聞くことがある。日本語教育の番組があれば、さくら女子中学校だけでなく、タンザニアの多くの場所で使用の要望が挙がると考えられる。


さくら女子中学校 校舎

さくら女子中学校 校舎



代表研究者 古谷 公文

一般社団法人 キリマンジャロの会 代表理事

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