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JAMCO オンライン国際シンポジウム

第29回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2021年1月~

教育支援のための放送や新しいメディアの可能性~コロナ危機の中で~

2020年のタンザニア・さくら女子中学校の取り組み

代表研究者 古谷 公文
一般社団法人 キリマンジャロの会 代表理事

要約

 タンザニア、キリマンジャロの麓の村・アルーシャに生徒数200人規模の全寮制女子中学校(さくら女子中学校・Sakura Girls Secondary School)が、日本政府や企業などの支援により2016年1月に開校した。アフリカの多くの国の女子は、初等教育終了後、10代前半で結婚するケースが多く、それが貧困の再生産の一要因になっていると言われている。この現状を変えていくため、この学校では、理数系に強い女性リーダー、創造的な人材の育成を目標にしている。
 これまで、放送文化基金の助成も得て、JAMCOやNHKインターナショナルが保有する番組を含む日本の放送 番組(623番組)を教材として加え、授業に活用してきた。
 昨年、改めてその利用状況や、生徒や教員の意見・感想を調査する中で、学習でICTを活用することの意義が、より明らかになった。
 開校から5年目となる2020年、新型コロナウィルス(COVID-19)が世界中で大流行を起こし、タンザニアでは3ヶ月間以上の臨時休校を余儀なくされた。7月より、学校は再開されたものの、日本人スタッフはまだタンザニアへ帰任することはできておらず、タンザニアの状況も読めない中、手探りではあるが、最大限、可能な限りの支援・教育活動を行なっている。

①新型コロナウィルスの状況下でのさくら女子中学校の取り組み

背景

 タンザニア国内で新型コロナウィルスの感染者が出たことを受け、3月17日より全国の教育機関(幼稚園、小中高等学校、大学、専門学校など)が臨時休校となった。大学や高等学校は6月1日より、小中学校については6月29日より再開された。
 しかし、タンザニアにおける新型コロナウィルスの状況は、感染者数含め不透明な部分が大きく、日本へはなかなか情報が入ってこない。さらに、現地の方の多くは「タンザニアはコロナに勝利した」という大統領の発言を信用しており、街中でマスクをしている者はほとんどいないという。(現地在住の外国人の情報。)
 そんな中、日本から現地に適切な理解を促しながら、現地では可能な限りの対応を行ってもらうことが重要と考え、キリマンジャロの会の支援のもと本取り組みを行うに至った。

目的

 さくら女子中学校において、新型コロナウィルスの流行る状況下でも、生徒に対して安全に教育活動を提供し、学習の機会を確保するのはもちろん、教職員(教員、清掃スタッフ、給食スタッフ、寮母、用務員など)に安全に働ける環境を目指す。

方法

  • 生徒や教職員用のマスクや石鹸、検温器の購入及び、それらを利用した新型コロナウィルス感染の予防対策を指示した。

  • 日本の文部科学省のHPで公開されている、「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜学校の新しい生活様式〜」より、タンザニアでも実施が可能な対策をまとめ、さくら女子中学校の担当へメールで送付した。

結果(実施状況)

  • マスクを生徒全員に配布。
    →タンザニアでは、マスクをつける習慣は無く、慣れないためか、「徹底」とまではいっていない。

  • 校舎の前に「液体石鹸」と「蛇口付きの水タンク」を設置。
    →石鹸を使ったこまめな手洗いが行われている。もともと食事の前後に石鹸で手を洗う習慣があることもあり、手洗いに関してはこまめに行なっている。
    (※余談ではあるが、化学の授業で制作した石鹸も活用しており、この状況をアクティブラーニングに繋げる取り組みをする理科教員もいる。)

  • 検温器の購入及び活用。
    →検温のほとんどの教員が学校敷地外に住んでおり、バス等の公共交通機関で通勤しているため、毎朝、学校の門で検温を行なっている。訪問者に対しても、全員に検温を義務付けている。


②ICT学習システム「RACHEL-Plus」の導入

背景

 さくら女子中学校は桜さくら女子中学校は、開校より年々、国家試験(National Examination)の結果が上がっており、学力レベルが向上してきている。現在では、アルーシャでも学校ランキングで常に上位に入るほどの進学校になった。(2019年度は、4年生の国家試験結果がアルーシャ州内11位/46校、2年生の模擬試験結果がアルーシャ1位であった。)
 しかし、試験結果を見ると、「総合的に点数は高いが、理数系科目の点数が低い」という弱点も見えてきた。JICAやご支援者の方々の協力のおかげで、実験器具が十分に揃っており、有効に活用されているが、生徒の学習へのよりいっそうの学習サポートが必要であると考えた。
 そこで、ICT学習システムを導入し、授業や自主学習、教員の授業準備に活用することで、「理数系教育の強化」を目指す取り組みが始まるに至った。


RACHEL-Plus と授業風景



RACHEL-Plusの導入

 RACHEL-Plusは、アメリカのカリフォルニアを拠点とする団体「World Possible」が2009年にオリジナルバージョンを開発したもので、アフリカなどの僻地でも平等に教育が受けられることを目的としている。
 RACHEL-Plusは携帯、可搬型サーバーで、機器の中に映像教材、百科事典、確認テストなどの教材データが収納されており、機器から飛ばした無線ネットワークをパソコンと繋ぐことで、その教材を自由に使う事ができる。
 ではまだ53%の人々にインターネットの環境が整備されていないという。
 この機器はそうした地域の教育で活用できるメリットが期待できる。

以下、ホームページのリンク
https://worldpossible.org

RACHEL-Plusの仕組み




目的

 ICT学習システムを導入することで、生徒の学習(理数科科目に限らず)をサポートすることで、学力の向上を図る。

方法

 2020年7月より、実験的にICT学習システム「RACHEL-Plus」を導入し、教室内のネットワークでパソコンと接続し、授業内外で、生徒の授業や自主学習に活用する。また、教員の授業準備の際にも活用してもらうよう、利用を促す。
※「RACHEL-Plus」は、教室内にネットワークを飛ばし、パソコンを使って、インターネットに繋がずに、世界基準の授業動画、練習問題、また、wikipediaなどのコンテンツを使った、調べ学習などができるICT学習システムである。

結果(実施状況)

 現在は週1回、RACHEL-Plusを活用した授業が実施されており、生徒からは以下のような肯定的な声が上がっている。

  • コンテンツや様々な例が、理解の助けになっている。

  • とてもシンプルに説明してくれるので、わかりやすい。

  • 授業ではわからなかったことが、RACHEL-Plusの学習を通してよくわかった。

  • 教科書のように、必要な時に気軽に使える教材になって欲しいと思う。

  • パソコンの授業や図書館利用の時間の際に使えたらいいなと思う。

 生徒の声を聞く限り、RACHEL-Plusが学校での学びをより一層、促進させてくれそうな様子である。

今後の展望

 導入してまだ間もないため現地からの報告はまだ十分届いていないが、現場の教師からは以下の反響が届いている。

  • 難しい内容でも、シンプルに解説してくれるため、生徒の理解が速い。

  • 例えば、苦手な生徒が多い「減数分裂」の単元も、生徒の理解に効果的であった。

 今後、成功事例や改善点を明らかにすることで、タンザニアの学校で広く活用されるきっかけになればと思う。


さくら女子中学校の様子

代表研究者 古谷 公文

一般社団法人 キリマンジャロの会 代表理事

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