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学生と教師の二つの立場から見た遠隔教育

JAMCO オンライン国際シンポジウム

第29回 JAMCOオンライン国際シンポジウム

2021年1月~2021年3月

教育支援のための放送や新しいメディアの可能性~コロナ危機の中で~

「私的遠隔教育体験論」
学生と教師の二つの立場から見た遠隔教育

青木 繁
TVプロデューサー
東京工業大学 博士課程
駒澤大学 非常勤講師

1. はじめに
2.「私的遠隔教育論」とは
3. 遠隔教育に関心を持ち続けて
4. 遠隔教育で何が起きるか
5. 遠隔教育で起きたこと 〜学生として、非常勤講師として〜
6. まとめ 遠隔教育の可能性と課題

1. はじめに

 2020年は世界的に変化の年であった。しかし、それは前向きな変化ではなかった。新型コロナウィルス感染症のためと、ロックダウンという都市封鎖、経済活動の機能の停止、さらには、感染を防ぐために三密・マスク着用・検温・ソーシャルディスタンス・ニューノーマルという奇妙な言葉と行動様式が日々の生活の中で強制され、人とのコミュニケーションが断ち切られた。「仕方がない」という一言で多くのものを失った不快な年であった。
 中でも、大学の閉鎖・一部閉鎖は、いま(2020年12月)も、全面あるいは一部が、継続している。2020年4月から既に9ヶ月である。とりあえず授業は遠隔教育という教育方法を代替として行われ、今、これが日本の高等教育の標準のような地位を占めはじめている。
 遠隔教育や通信教育は、実は最上の教育環境を指す言葉ではなかったはずだ。かつての濃密な個別授業、チュートリアル、ゼミなどと言う丁寧な教育方法は、高等教育の中心であったが、それが過去という彼方に飛んで行った。突然、遠隔教育に変わり、しかし、異論が出てこないことに驚く。

 ものの変化には潮目というものがある。遠隔教育の発展の礎の学問、教育工学や視聴覚教育は、第二次世界大戦中にアメリカで始まり発展した。日本では、視聴覚教育という教育方法は、戦後のアメリカの影響を受けた教育改革の中で、社会教育、公民館活動、巡回映画上映、テレビと結びつき、広く一般に普及して行った。
 その後、メディアの発展と共に、放送教育、マルチメディア教育などと名前が変わり、教育とメディアの関係は深まり、その利用が更に広がっていった。今回は、皮肉なことに新型コロナウィルス感染症が変化の契機となり、インターネットを使った遠隔教育の急速な普及が、教育の世界で進んでいる。

 本論は遠隔教育とは何か、体験で語る「遠隔教育論」である。日本の遠隔教育は、教育の機会均等、教育革新などの様々な目的で、多分野で既に実践が試行されてきたが、今回は全く思いも掛けない事態がきっけとなり、壮大な実験が始まってしまった。実際に学業の場でどんなことが起きているかを見つめてみることが目的である。
 この変化の重要性は単に日本だけの出来事に留まらない。ポジティブに考えるならば、遠隔教育やメディアの教育への利用は教育改革に大きな可能性を持っている。
 たとえば教師が不足している途上国などでは、それを解決するために多くの実験や試みがこれまでつづけて行われてきた。いま起きている日本の経験は、教育改革に尽力にしている途上国への、重要な実践記録として、教育方法改善への知恵が提供できるチャンスであるとも考えられる。1

2.「私的遠隔教育論」とは

  • 2-1. 学生として講師としてみた遠隔教育

     今、私は学生と教師という二つの立場にいる。学生としては、2018年秋学期から、東京工業大学環境・社会理工学院社会・人間科学系の博士課程に所属し「宗教社会学」を専攻している。もうひとつ非常勤教師して、2017年から駒澤大学で「視聴覚教育」を教えている。
     2020年4月から、この二つの大学で同じ事態が起きた。国の非常事態宣言を受け、突如、遠隔教育中心の学校に変わってしまったのだ。自分にとっては、授業の受け手側である学生と、教える側の教師の立場を、同時に同じ自宅の机の上にあるパソコンで進めている状態である。
     しかし、遠隔教育は決して目新しい教育方法ではなく、戦後、法政大学や慶應義塾大学では一早く遠隔で大学課程を教える制度を整え、すでに多くの卒業生を送り出している。
     また、イギリスのOpen Universityを手本に1983年に放送大学が新しく設置された。放送大学は、独自の放送局を持ち、テレビとラジオ、そして、対面で授業を展開し、現在は大学院までの規模をもつユニークな大学として発展している。
     通信制課程の高校も新しい中等教育の形として戦後誕生した。2000年代には、規制緩和の波を受けさらに大きく変わった。学校の運営主体は株式会社の形式も認められ、学生の募集地域の拡大、学習期間の短縮などが認められて、多様な形態の通信制の学校、そして数も急増している。しかし、これらの改革は周到な準備が事前に十分におこなわれてから始まった。

  • 2-2. 突然の遠隔教育が開始した

     遠隔教育の準備がほとんど何もなされないままに、大学の教育方法を一斉に変えるという、滅多に起こらない特殊な事態が今、大学では起きている。今回の体験は、今後の日本の教育のあり方や形態、教育方法、メディアの教育利用など、教育の実験フィールドであると言っても良い。
     本論は、東京工業大学の学生と、駒澤大学の教師という二つの立場から見えてくる、体験的な「私的遠隔教育論」を描くことである。この変化は、日本の教育に将来どんな変化を起こす可能性があるかの予言とも言える。
    (初等教育や中等教育の学校閉鎖は既に解除された11月、この状況はいまも続き2020年が過ぎ様としている。)

3. 遠隔教育に関心を持ち続けて

  • 3-1. なぜ遠隔教育に関心を持つのか

     なぜ遠隔教育に私は関心をもつのかを、遠隔教育と自分との関わりから、もう少し詳しく説明する。教育テレビ、あるいはデジタル時代の今で言うところの教育コンテンツの制作に、私自身は大学の教育学専攻の学生時代から関心があった。
     その後、1980年東京・三鷹にある国際基督教大学で視聴覚教育・教育工学を専攻の修士課程に入学した。大学院の授業はとてもアカデミックでもあり、実践的でもあった。
     授業は教育工学の基礎的な論文の講読2から始まり、教育統計学の授業など。実践では、当時タンスほど大きな電算機を使ったコンピューターを使いティーチングマシン(CTM)の原型の制作実習、FORTRANを使ってのSPSSソフトの使い方、映像コンテンツの制作など。視聴覚教育・教育工学の基本概念を十二分に学ぶことができた。そして、修士論文は斬新な幼児向けテレビ番組として話題であった「セサミストリート 」3 を取り上げまとめた。

  • 3-2. 放送の現場で出会った新しい遠隔教育「サイバーテキスト」

     大学院で学んだことを活かそうと、教育テレビの番組制作を希望し、日本放送協会に就職した。しかし、新人は、最初から教育番組の制作ではなく、番組制作の基礎からの訓練が始まる。地方局に赴任し「ニュース番組」から「のど自慢」まで、多種多様な番組制作の経験を重ね、番組制作を体得する。斬新な教育番組を制作したいという、当初の希望が実現するにはかなりの時間がかかった。

     放送局で仕事を始めて20年近くが過ぎたころであった。日本放送出版協会に出向していた頃に、忘れない番組制作と出会った。1990年代後半、日本でもインターネットの本格的な利用が始まった時代であった。
     NHKから「放送とインターネットの融合の可能性を探ろう」と、ひとつのプロジェクトが立ち上がり、企画提案の募集があった。 日本放送出版協会は、NHKのすべての語学教育の放送テキストを発行している。放送番組のテキストを担当の会社として、「サイバーテキスト」と名付けた「番組連動型のインターネット版語学テキスト」をつくるという企画提案を行った。これは、今振り返れば、新しいタイプの遠隔教育システムの実験だったかもしれない。
     視聴者はインターネットで学習し、その学習内容が反映された教育番組を視聴するという仕掛けである。復習はインターネットの映像で何度も繰り返し可能であると想定した。
     提案企画のタイトルは「トライアル!インターネットで英会話」、提案は採択され、1997年11月11日、18日、25日の3日間、NHKで特別番組として放送された。
     しかし、この実現するは、実際、大変であった。
     全体は、①番組連動のHP、②放送番組、その後の、③CD―ROM付き書籍の発行で構成されている。そして、テーマは、実践で役立ちそうな海外旅行英会話と決めた。
     まず、この特別企画のためのインターネットの学習ホームページ(インターネットテキスト)3週間分の制作が始まった。音声、映像付きで配信するために、録音、ロケ・映像編集と違いかなり手間のかかるものであった。また、当時は回線の速度も遅く動画再生には苦戦した。
     学習者は、このHPに自分の様々な属性(学歴、英語学習歴、性別、地域など)を入力、そして、次に英語の課題(基本フレーズ、単語、音声教材、練習問題)を動画とともに学習する。最後にその回のまとめのクイズに答えると、それが即座に採点され、学習者のウィークポイントや、更に勉強すべき部分が分析され、今後の学習アドバイスが、ホームページから学習者に示される。 一方、特集放送番組の制作側は、学習者の属性と回答との関係(課題の難易度、学習歴との関係、正答率、アクセス時間、回答に要する時間など)をインターネットのログの記録に基づいて属性により分析した。
     そして、毎週の放送番組は、ログから分析した視聴者の回答傾向や、特に難しかった問題の解説など、番組の視聴者の質問に即座に応えるという構成である。この番組を一週間ごとに3本制作した。まさに双方向型語学番組制作である。
     当時、この斬新な企画に賛同し協力してくれ、データ分析を担当した凸版印刷の若手のスタッフたち、膨大な英語テキスト・課題を短時間で準備した西蔭浩子、萩野谷悦子先生(大正大学)の教材作成チーム、カリキュラム作りのアドバイスを頂いた中野照海先生(国際基督教大学)、放送番組の制作とインターネットHPを制作したプロダクション(ウオーク)の制作者集団、そして、出演者のヒロコ・グレースさん、との共同作業は、強烈な印象でいまでも忘れられない。
     さらにCD―ROM付き書籍「サイバーテキスト」の制作である。この3回の特別番組で、HPで視聴者が回答する英語問題の課題として準備したコンテンツは、練習問題が1000問、基本フレーズが 1331、基本単語 が1345、超難問リスニングチェックが100問で、これを改めて編集し直して、「サイバーテキスト(CD-ROM付き書籍)」として出版した。4全く新しい教育コンテンツ制作企画で、教育教材をインターネットのホームページ、放送番組、書籍と多面的に展開するという醍醐味を感じた得難い体験であった。

  • 3-3. 学校放送は“NHK for School”へと発展

     その後、私自身はNHKに戻り、2001年からは、NHKの学校放送番組部に異動した。学校向け番組のチーフプロデュサーや番組部長として、2006年まで5年間、教育番組の仕事を担当した。
     当時は学校番組の変革期であった。学校向け放送番組はインターネットも同時に利用する「デジタル教材」変わろうとしていた。また、文部科学省の学習指導要領の改訂の時期でもあり「総合的な学習の時間」が学校で段階的に始まっていた。この新しい科目の指導に役立つ、インターネットと放送を同時に活用した、総合的な学習の時間向けの「デジタル教材」や、インターネットとリンクした理科番組などが次々と制作されていった。
     これらは、現在はさらに視聴番組本数が増え、“NHK for School”としてインターネットで教材と共に視聴できる、膨大な、教育・学習コンテンツサイトに発展している。
     ところが、意外なことに多くの教育関係者がこのサイトや、コンテンツの豊富さを知らないのである。「百聞は一見に如かず」一度、訪ねてみると、内容の凄さにきっと驚くと思う。また、今回の新型コロナウィルス感染症で、小学校や中学校が閉鎖された時には、自宅での視聴を進める“NHK for School”の利用の仕方を教える特別番組の放送も行った。
     また、この膨大な教育番組コンテンツは、海外の国々の教育でも活用されている。特に実験や観察が難しい理科番組などは万国共通で、現地の言葉に吹き替え、学校の先生に利用されている。

4. 遠隔教育では何が起きるか

  • 4-1. 遠隔教育が始まる前

     2020年春、東京工業大学5の大学院は、新学期をどのような形態で実施するのか、ちょうど、大学の閉鎖などが噂されている時期で、大学当局は今後の授業の体制を議論していた。
     以下のようなメールのやり取りを大学のある関係者と行ったことを私は記憶している。日付を振り返ってみると、3月の末、大学の新学期が始まる数週間前である。
     「講義形式の授業が遠隔教育に変わった場合に考えることはなんだろうか?」という質問に対して、私の意見を述べたものである。自分の考えていることを率直に述べているが、理想的なあるいは傍観者の様なメールであるといまは思う。
     さらに、この後、自分自身が学生・非常勤講師と、大変な立場になってゆくとは、その時は少しも考えていなかった。

  • 4-2. 遠隔教育についてのメールのやりとり

     「私は、結論からするとZOOMなどの映像付き遠隔教育ではなく、対面の集中講義を実施する方を支持します。ZOOMでは、どこまで先生や学生の期待する授業が達成できるかは、疑問に思います。
     その理由は次の通りです。教室の先生をテレビカメラが写して中継する授業と、教室の授業とは別物で異なる内容だと私は考えています。
     ひとつは臨場感の違いです。芝居を劇場に行って鑑賞するのと、テレビで鑑賞するのとの違いに似ているように思います。生身の人間の講義は、参加者である学生との間にちょうど芝居の役者と観客の様な相互関係が存在していないでしょうか。教師と学生の直接の言葉による会話がないとしても、見えないコミュニケーションが存在(ある)と考えます。また、教室の授業はその様な前提で、構成され、進められているものだと思います。
     学生は、講義に納得すれば、ある種の共感のサインを送ります。反対に学生が退屈で居眠りを始めれば、教師は不快になり、微妙な合図を送り、目覚ましのサインや、あるいは講義の展開を変える。極端にはチョークを投げる(これは?)など行うでしょう。教室での講義は学生と教師の、生の緊張ある相互コミュニケーションの場です。これがちょうど芝居の臨場感と私がいうものです。
     しかし、映像配信の授業ではこの大部分は失われます。ですから、学生からすれば味気ない、そして、教師からすれば手応えのない授業になりかねません。
     実際、教育テレビで教室の黒板の前で話すストレートトークの番組はほとんどありません。90分を黒板の前で話す映像中継だけで、興味を維持し、学生を惹きつけ続けることは、相当に大変なことで無理です。まして、視聴する側の学生は、教室という閉ざされた場所にいるのではなく、自宅では集中力が格段に落ちます。
     もうひとつは、手間をかけない講義型番組では、退屈でつまらないということです。教育テレビはレクチャー型番組で成功しているものもあります。しかし、一見すると単純なただ講師を写している様な番組構成に思いますが、実は様々な工夫が随所にされ多くの手間がかけられています。カメラアングルの切り替え(大学では複数のカメラは使えない)、テロップでのメセージの補足・補強(文字情報などは準備も、映像処理もできない)、講師の話に関連したインサートVTRの挿入(事前ロケや資料映像は手間がかかる)などです。
     これは学習者(視聴者)の注意を引き付け、関心を高め、理解を深めるための様々な工夫なのです。そのために自然な流れで番組が視聴できます。それでも、ストレートトーク番組は、通常は30分、最高でも45分が限界です。100分など聞いたことがありません。
     ストレートトークの番組で成功している実例があります。 “TED”と言われる番組シリーズです。毎回識者が観客の前で自分の分野の専門的話題をプレゼンテーションする単純な講義形式の番組ですが、6しかし、この番組の優れているところは、講演者と講義内容の質が非常に高く、話術も面白いこと、さらに映像の処理も最新のテクニックを数多く使って番組を制作しています。視聴者を飽きさせない、凝った舞台美術やプレゼン画面、また、観客との交流を考えた椅子の配置も見事です。それでもTEDは20分番組です。

     さらにもうひとつの大きな違いは、遠隔教育は教室での教え方と教授方法が、全く違うのではないかと考えます。事前と事後までを一貫した総合的な学習プランを遠隔教育では用意しないと学習効果が上がらないと考えます。
     学習者は事前に提示された課題で事前学習を行い、事後は、課題や講義への質問を受け付けること、フィードバック、学習者間のチャットなどを行います。インターネットやその他の方法を使った、十分な準備をすることが重要です。これが準備されていない遠隔教育は十分な学習成果が期待できないでしょう。
     大学レベルの遠隔教育では、“TED”以外にすでに、dX7やCoursera8が優れた遠隔教育を提供しています。これはかなり高度なもので、現在の遠隔教育の見本、最も素晴らしい遠隔教育方法の実践例です。世界中の名門大学が自分の大学の有名教授を中心に作り上げた授業の芸術作品です。シラバス、参考文献、授業の課題、授業内容なども緻密に設計されています。
     東工大が遠隔教育を行うなら、このレベルの授業を私は期待します。しかし、これらの講座は事前の準備やHPの作り込み、運営に大変な時間をかけていますし、予算・運営の要員の規模は大きく、教授が一人で運営していません。
     繰り返しになりますが、授業の質を保つためには、私は、夏休み集中講義(この時点では夏休みには新型コロナウィルス感染症は終結していると考えていた)が望ましいです。万一、夏にも集中講義が難しいときには、遠隔授業+事前課題、事後課題、質疑(時間をかぎりチャットの様な形で)を、ZOOM、OCWを使い、最善を尽くすことはいかがでしょうか?その準備に時間を取ったほうがいいと思います。ぶっつけ本番のZOOM授業は、質を保つ上で、無謀だと私は考えます。」

     こんなことを2020年3月、遠隔教育が本格的に始まる前には考えていた。まだ、遠隔教育を1年間も体験することになるとは全く考えもしない頃であった。

5. 遠隔教育で起きたこと〜学生として、非常勤講師として〜

  • 5-1. 学生と遠隔教育

     私は、既に述べた様に、東京工業大学環境・社会理工学院社会・人間科学系の博士課程に所属する学生であると共に、2017年から駒澤大学で「視聴覚教育」を非常勤講師として教えている。2020年4月から始まった遠隔教育の渦の中で、私に、どんなことが起きたかをメモを頼りにして振り返ってみた。
     まず学生としての立場の話から始める。遠隔教育で東京工業大学の学生が利用可能なメディアは、Eメール、図書館サービス、教務webシステム(授業登録、成績など)、OCW-i(登録授業のレポート提出、自分の登録授業一覧表、受講授業の教師からのお知らせなど)、学習ポートフォリオ(自身の学習成果の記録を記入)などである。シラバスは外部からもアクセスできる大学のHPに公開されているものを閲覧することになる。また、遠隔教育が始まると言っても特別に新しいシステムは、4月から設置してはいなかった。
     東京工業大学では、私は博士課程の学生と言うこともあり、登録授業数はできるだけ抑え2科目だけにした。この時期は、文献研究やフィールドフォワークに集中したいと考えていた。
     もちろん登録した2つの授業はともにZOOMを利用した遠隔授業である。なお、2020年前期のシラバスをみると、遠隔授業への変更がほとんど全部の科目で行われていた。
     大学の学暦の開始は、通常の予定よりも遅れて5月4日であったが、大学院の前期ゼミ(東京工業大学は4学期制で、正確に言うと、1学期、2学期)は4月8日から始まり7月の末まで4ヶ月間続いた。
     始回のオリエンテーションで前期の進め方の基本方針が決まった。毎回発表者を決め、全メンバーが自分の研究計画の報告を行う。次に前期のテーマ「疾病と宗教」に関す論文を2件ずつ毎週読み進んでゆくこととなった。
     毎回のZOOMの授業内容は、事前にレジュメをメーリングリストでメンバーに送付、発表者は共有画面でそれを説明する。その後、ZOOMで議論をするのがゼミの基本パターンである。
     ちなみに、この間に様々な変化があった。4月に、研究室には新入生1名が修士課程に入学したが、遠隔でZOOM越しの挨拶以外、いまもまだ直接にはお会いしていない。
     また、学会開催もZOOMとなった。「宗教と社会学会」(2020年6月)「日本宗教学会」(2020年9月)「駒沢宗教学研究会」(2020年11月)の学会に参加したが、いずれも遠隔だった。通常、学会では、研究者の最新の口頭発表を聞くことができ、大学や研究機関の様々な方には懇親会では高名な先生の謦咳に触れることのできる絶好の機会であるが、今年は全く叶わなかった。
     その他、各大学の宗教社会学の研究者同士で開催される研究会も、次々とZOOM形式で開催されるようになった。ZOOMは、距離的な問題がなく、参加はそれだけ簡単になり、経済的な負担もなくなったが、個人的に親しく語り合うという様な交流の機会は全くなくなった。

     社会科学系の宗教社会学を専攻する大学院生としは、フィールド調査は欠かせないが、新型コロナウィルス感染症のために実施することがほぼ不可能となった。特に、韓国での宗教団体のクラスター発生があり、日本でも教団・寺院・教会など宗教施設では軒並み集会の中止が起き、あるいは施設訪問もできなくなった。
     緊急事態解除後、フィールドワークとして新宗教系のある教会のZOOM礼拝に参加許可をいただき、論文作成のための参与観察を私は始めることがかろうじて出来た。毎朝7時半からおよそ45分間行われる「朝の礼拝」の会場は東京の教会であるが、奈良、和歌山、フロリダと全国に信者が点在しており、ZOOMでの実施に変わったことで、「朝の礼拝に参加する機会がより増えた」と信者さんは喜んでいた。この参与観察の記録をフィールドワークの研究へと結びつける準備をいま進めている。しかし、活動がこれだけ厳しく制限されると、博士課程での研究は困難である。

  • 5-2. 東京工業大学の遠隔教育の調査結果

     東京工業大学は、2020年6月、前期受講した学生全員を対象に遠隔授業をどの様に受け止めたかの調査を行なった。そして、「「COVID-19対応によるオンライン授業等の受講・学習・生活状況アンケート調査」の結果について」9として調査結果を発表し公開している。
     この調査の目的はオンライン授業を改善するためで、
     調査期間:2020年6月2日(火)~5日(金)、
     対象:全学生で、回答状況:3,724名 (全学生の36.1%)であった。

     私もこのアンケートに回答した。詳細な結果はインターネットで公表されているので、直接閲覧してほしいが、興味深い点をいくつか紹介する。
     ひとつは、どのくらいのZOOM授業を学生が一週間に受講しているかである。学部1年生は14コマ(23.5%)・2-4年生は12コマ(16%)・大学院生は7コマ(10.8%)が最大値であった。
     1コマは100分授業であるから、単純計算では学部1年生は週23時間(1日およそ5時間弱)も、ZOOM授業を受けていることになる。1日5時間以上もパソコンで授業を受講し、さらに予習や課題をするというのは驚異的である。
     また、遠隔授業では、集中力を継続するのには苦労している様だ。調査では、「そう思う・どちらかと言えばそう思う」の合計が、学部1年生では52.3%・2-4年生は61.4%・大学院生は52.3%であった。教室場面と自宅のPC前では、環境が明らかに違うために、授業に集中できないのかもしれない。あるいは疲労がたまり、限界なのかもしれない。
     前期は一時期、図書館が閉鎖されていていたこともあり、学生からは、課題が多く、負担だという意見も多い。「そう思う・どちらかと言えばそう思う」の合計が、学部1年生では61.7%・2-4年生は60.0%・大学院生は41.6%であった。
     調査の結果を受けて、調査委員グループは、教員に「課題の量への配慮」「録画してストリーミングができる様にすること」「授業中の休憩(5分程度)」「ビデオのON/OFF」「成績評価への丁寧な説明」「質問時間の設置」など改善の指示をしたとコメントしている。

  • 5-3. 東京工業大学の遠隔教育を受講して感じたこと

     ゼミのZOOMの授業を体験して感じたことをいくつか述べる。講師は顔出しでレジュメや資料を背景に講義するが、受講者は自身の映像と音声を切って話を聞いているのが通常である。講義が60分、100分間になると、学生は何をしているか講師側からは、その間全く計り知れない。
     講師が確認できる情報は、いまZOOM上にいる受講学生の名前、映像と音声がonかoff、チャットの反応(別添の資料を届けるとき以外、多くの場合参加者が講師にたいしてチャットで反応することはない)、これ以外は講義者側にはわからない。話す側(通常は講師やゼミの報告者)は、ZOOMでは、暗い深い井戸の中に向かって話し続ける様な手応えのなさや、反応の見えない虚しさを切実に感じる。
     参加感を高める講義の工夫として、教師が参加者に近況報告、小グループ分けして数人で議論してもらう(ブレイクアウトセッション)など、随時行うことがある。
     しかし、質的な思考の深まりを助けるには、ZOOMというメディアの特性になにか限界があるようにも思う。ZOOMと連動した教育方法のシステム作りには、さらに工夫が必要なのではないかと感じる。この部分は、今後さらに十分検証されるべき研究課題であると考える。

     東京工業大学は、2020年10月から後期に入った。遠隔教育と面接型の両方を授業の中で選択できる様にフェーズ10が変わった。しかし、大学構内での感染者が複数報告され、依然、対応が慎重であることが求められている。遠隔教育は、今年度いっぱい、いや、このまま、2021年度もそのまま続くかも知れない事態である。

  • 5-4. 非常勤講師と遠隔教育

     今度は非常勤講師、教える側から見た遠隔教育のことを述べたい。
     2020年4月10日から駒澤大学11で担当する授業も遠隔教育となり開始した。困ったことに「視聴覚教育」の授業は、様々な教育テレビの映像、特に秀逸なものを見せながら講義を行ってきた。4年目の授業になれば、どんな映像を見せたいか、NHKで放送した特集番組のどれが授業には適しているか、授業展開の設計図はおおよそできていた。
     しかし、それが困難になった。放送番組の利用は教育目的では利用が可能だが、ネットにのせる、あるいはファイルとしてクラウドサーバーにあげることは、もう一度著作権の許諾が必要である。視聴覚教育を遠隔教育で教えには大きな課題がある。
     駒澤大学のメディア環境は、東京工業と同様に、特別に4月からの遠隔教育用のために特別に準備が整っているわけではない。駒澤大学の授業に利用できるメディアは、Gメール(Eメール等)、KONECO(シラバス、授業登録、成績処理)、C-Learning(授業の支援システム、レポート、出席、教材、連絡システム、クラスでのアンケート等)、Yestudy(科目ごとの学生への連絡、自分自身の経歴紹介等)などである。
     2019年度までは、教室での授業を中心に行っていたので、KONECOという学生の授業登録と成績処理システムの機能、そして、諸連絡用のGメール以外はほとんど利用しなかった。教室では対面授業が中心であり、それで十分に事足りていた。
     しかし、駒澤大学からは「4月からは遠隔教育で」という指示である。大学のシステムを縦横に使いこなして、学習指導を行うにはそれなりの事前の教材準備と、メディアの扱い方の学習が必要である。しかし、正直に言うと、メディアの扱い方が今ひとつわからなかった。普段であれば、担当部局を訪ね、使い方を聞くのだが、大学は閉鎖しており、それもできない。まさに手探りのスタートである。
     結局、「視聴覚教育」の授業は、C-Learningというシステムを使うことにした。学生とメールでのやり取りをすること、講読用の教材の準備(PDFやWEBのアドレス)すること、レポートの提出という一連のことがこのシステムで行えるため、授業はこのシステムを中心に行っている。
     また、駒澤大学は遠隔授業の定番ソフトZOOMの利用を推薦しなかった。サーバーの情報容量等の課題があるという事で、当初から映像活用は前提にはしていなかったようである。理由を尋ねたが、MS Teamsを利用して欲しいと言っていたが、教師が個人的に利用するのか、大学指定の公式アプリなのか、いまひとつ釈然としないし、いまもわからない。学生のメールと前期の終了時の、クラス内で行なったアンケートや、先生との話では、一部の授業では、いろいろな映像アプリを使用している様でもある。
     「視聴覚教育」の講義は前期と後期の通年であるから、およそ年間30回の講義になる。基本パターンは、毎回学生は課題教材を読み、レポートを提出、講師である私がコメントをメールで送り、各回の評価をするというながれで、現在20数回以上がなんとか終わった。
     受講する学生はとても真面目で勤勉である。20数回の講義を既に行っているが、受講生全員が全ての課題レポートを提出している。内容も期待以上のものが多い。質問もメールでかなりの頻度で届く。課題講読の教材は、書籍の一部分や、学術論文であるが、20回分を合わせるとかなりの量に既になっている。

     学習の成果というものは、簡単に測れるものではないが、通常の講義よりも濃密な内容になっているのかもしれない。学生の負担度や集中度は、実感では対面よりも遠隔の方が高い様に思える。
     まだ一度も受講生には、対面で合っていないが、これまでの授業よりは、数段手応えを感じている。しかし、残念なことは、優れた映像番組を視聴する場面が大幅に減ったことである。

  • 5-5. 駒沢大学の遠隔教育の調査結果

     駒澤大学では、前期に学生に授業アンケートをおこないその結果を東京工業大学と同様公表している。12
     興味深い点は、前年度(2019年度)との比較で、予習・復習の時間がおよそ40分増加、これは一つの授業に対してであり、もし8コマ履修であれば5時間以上予習と復習の時間が増えたと指摘している。
     理由としては、課題の量の増加、通学時間・クラブ活動・アルバイトの減少が影響しているのではないかと調査では説明している。
     前年度の調査と比較して平均値が上昇した項目としてはほかに、学生が「熱心に授業に取り組んでいる」0.27ポイント上昇(以下平均で)、「欠席率」0.16ポイント低下、「教材見やすさ」0.19ポイント上昇、「授業内容への興味」0.15ポイント上昇である。
     遠隔教育のほうが、学修に熱心に取り組む様になり、良い点がかなりある様に調査からは見える。このほかに、満足度、課題などについても、さらに深く調べ、学生の意見を知りたい。駒澤大学では、2020年度後期にもアンケート調査を再度行うということである。

6. まとめ 遠隔教育の可能性と課題

 2020年は、私は遠隔教育を高等教育に導入するという、教育改革が、かけ声ではなく、本当に実施された年であり、歴史的に記録されると思っている。遠隔教育が学校教育の中へ否応なく導入され、乱暴なやり方かもしれないが実施された。多分、新型コロナウィルス感染症がこれほどに、世界中に広まらなければ、日本での実施や教育改革はこのスピードで進まず、もっとずっと時間がかかったと考えられる。
 では、これを好機にどんなことを推し進めたら良いのだろうか?この点も、学生、そして非常勤講師という二つの側面から考えてみたい。

 ひとつは、大学における教育コンテンツ制作支援システムが必要である。4月からの授業の開始といっても、その遠隔教育の内容の全ての制作は担当の教師に任されている。100分あるいは、90分の遠隔授業を前期15回分制作することは簡単ではなく、ひとりでとても手に負えるものではない。例えばTEDの様な授業を準備するための、作業量は20分の番組だが、何日、あるいは何週間もかけている。
 日本の普通の大学の遠隔授業では、ひとつの授業を運営するだけでも、教材をPDFにしてメーリングリストからの配布準備、授業用パワーポイントの作成、映像素材の準備、著作権確認と処理、授業の出席確認、課題の作成と配布、評価、フィードバック、質疑応答などが考えられる。授業コンテンツを制作する専門の支援のチームの助けが必要なことを明らかである。13
 また、予め予算を確保することも必要である。大学では、教員は研究費の獲得には熱心であるが、授業のため経費を特別に獲得するということはあまり聞かない。授業の目的でのコンテンツ制作予算を、十分配慮することは遠隔教育の実施では重要である。 たとえば、こんなアイディアがあるかもしれない。
 学部や学科での基礎科目では、経済学入門、社会科学入門、憲法などのコースは5年間利用のコースデザイン設計と予算計画を行えば、単年度でなくて5年間の期間で考えると5倍の予算が使える。経費の配分や使い方など新しい試みが必要かもしれない。

 それから、この突然の遠隔教育の記録を、丁寧に残すことが大切である。駒澤大学の調査では、学生の学習時間が遠隔教育を行うことで多くなったと言う様に、どんな教育的な効果が起きたかを、データから評価することは重要である。そのための調査プロジェクトはぜひ必要である。
 教育は、5年、10年と言う長期の期間での蓄積が大切である。とても残念で、不幸な出来事である新型コロナウィルス感染症の蔓延を契機としてではあるが、時代は次のステップに進みそうな予感がする。
 いま、目の前で起きている、日本の新しい教育の動きは、世界の特に途上国に新しい教育の機会と更なる開発の一歩を広げる、意味のある重要な事例として活用が期待できる。

 「私的遠隔教育体験論」と書いたが、この時期に体験したことは狭い意味の体験ではなく、新しいメディア、コンテンツの活用、教師の役割、教授法のあり方など多くの示唆が、その中には詰まっていたと実感している。

注釈

  1. 持続可能な開発目標(SDGS)を達成するための、重要な戦略の一つが教育である。貧困、健康、ジェンダーと平等、安全な水、不平等の根絶・・・、その目標の達成にはより良い適切な教育を受ける権利が守られることが重要である。遠隔教育はコストの問題、優れた教師の不足などを乗り越える可能性にある教育方法である。

  2. Gagne, Robert M., 1997, The Conditions of Learning, Holt, Rinehart and Winston, N. Y.,
    Schramm, W., 1977, Big Media Little Media: Tools and Technologies for Instruction, Sage, C.A., Publications, Inc.
    Schramm, W., 1978, Quality in Instructional Television, The University Press of Hawaii.
    Travers, Robert M.W., 1973, Second Handbook of Research on Teaching, Rand McNally College Publishing Com., Chicago.
    Joyce, Bruce, et al, 1972, Models of Teaching, : Prentice-Hall, New Jersey,
    などが教科書であった。いずれも、当時最先端の教育工学、放送教育の書籍で今でも基礎的重要文献である。

  3. 当時セサミストリートが誕生した経緯や、ハーバード大学とCTWの番組制作の記録、Lesser, Gerald S. , 1974, Children and Television,: Random house Inc., (=1976, 山本正・和久明生訳、1976、『セサミストリート物語』サイマル出版会)。日本の幼児番組『おかあさんといっしょ』『ひらけ!ポッキッキ』などに影響を与えた。

  4. NHK出版編、1999、『NHK出版サイバーテキスト ヒロコ・グレースの海外旅行英会話』、NHK出版
    NHK出版編、2000、『NHK出版サイバーテキスト ヒロコ・グレースのビジネス英会話』、NHK出版

  5. 東京工業大学は、大岡山、すずかけ台、田町の3つのキャンパスに学士課程約5,000人、大学院課程約5,500人の計約10,500人の学生が学び、うち、約1,700名が海外からの留学生。そして、約1,200人の教員と約600人の職員です。

  6. コロナヴィルスについて早くもレクチャーがTEDでは行われております。
    https://bit.ly/3nDOcCh

  7. https://www.edx.org

  8. https://www.coursera.org

  9. https://www.citl.titech.ac.jp/online_questionnaire/(2020年11月8日 閲覧)

  10. https://www.titech.ac.jp/news/pdf/tokyotech_news_24901_201016_fKxSwCiv.pdf(2020年11月11日閲覧)、「新型コロナウィルス感染症に対する本学の対応方針として」フェーズごとの対応を決めている。

  11. 駒澤大学は東京に3つのキャンパがあり、仏教の教えと禅の精神を建学の理念としている。仏教学部を始め8学部、大学院8研究科、学生数はおよそ1万5千人、専任教員337名・専任職員201名である。

  12. 駒澤大学FD推進委員会、2020、「2020年度「学生による授業アンケート」(前期)の集計結果-学修量・学修効果の向上」『FD NEWSLETTER』、第63号:OCT:p2-p9

  13. 東京工業大学も駒澤大学も教育革新や、情報化センター、FDの機関を設けている。

青木 繁

TVプロデューサー
東京工業大学 博士課程
駒澤大学 非常勤講師

 1950年生まれ。横浜国立大学、国際基督教大学大学院で教育学・視聴覚教育を専攻。その後、日本放送協会(NHK)に入局、教養番組部、生涯教育番組部、経済情報番組部、NHKアーカイブス、学校放送番組部などで、番組制作をディレクター、チーフプロデューサー、部長として担当。日本放送出版協会に出向中は、マルチメディア推進室でデジタル出版も担当した。編成局では、教育コンテンツの国際コンテンツのコンペ「日本賞」(Japan Prize)、アジア放送連合の国際共同制作「ABU未来への航海」、毎年秋に開かれる「教育フェア」の各事務局長。  NHK退職後は、NHKエンタープライズで、「NHKオンデマンド」担当の部長や、国際事業センターで海外販売担当の執行役員、その後、ニューヨークのNHKコスモメディアアメリカ副社長(NHK Cosmomedia America Inc., Senior Vice President)。  現在は、東京工業大学環境・社会理工学院・人間科学系(Tokyo Institute of Technology, Department of Social and Human Science)の博士課程で宗教社会学を勉強中、また、駒澤大学では非常勤講師として「視聴覚教育」(Audio-Visual education)を教えている。(2020年11月現在)

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